120回-参-予算委員会-18号 1991/04/10

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下条進一郎君/厚生大臣 下条進一郎君
海部俊樹君/内閣総理大臣 海部 俊樹君
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○白浜一良君
 これは中国に限りませんが、それに関連していわゆる不法滞在者の外国人の問題でございます。
 昨年の十二月二十五日に日本医師会から、不法滞在者、不法就労者の受診の機会が非常にあって支払い困難とか紛争の種になっている、厚生省はどのように対策を講じているかという照会文が医師会から出ているんですが、厚生大臣、これは承知されておりますか。

○国務大臣(下条進一郎君)
 お話がございましたように、お尋ねがございました。
 そもそも、不法という形で滞在しておられる方については法の救済がないというのが前提でございます。その中でも、特に伝染病とか措置を必要とするものにつきましては別な制度でこれは救済できることにはなっております。一般の病気の場合は、これはその不法滞在者がまず前提としては国外退去をされるべき筋のものであろうと思いますが、その関係で、その措置がとられていない段階で医療を受けられた場合の問題は、これは医療機関とその御本人との民法上の取引の関係になろう、こういうように解釈しております。

○白浜一良君
 大臣、そこでトラブルが起こっているから言っているんです、その医療機関とその方との。任されたって、実際支払いがないとか、支払いしないんだからもう診療しないとか、そういうトラブルが起こっているから、そういう問題に対して厚生省としてどう対応しますかという質問なんです。これはどう対応されたか。照会文に対してそういう返答をされたんですか。

○国務大臣(下条進一郎君)
 先ほどもお話しいたしましたように、不法労働者を救済するということは、これは一般の不法でない方の負担において救済するという一つの筋になろうかと思いますので、この措置をとることは今困難でございますので、今後の一つの御相談をしてまいりたいということで返答いたしております。

○白浜一良君
 医師法の十九条には、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と書かれているわけでございますが、もし不法就労者が診療を求めた場合に医者は拒むことはできませんね、この法律によりましたら。

○国務大臣(下条進一郎君)
 医師法の前提は、今委員のおっしゃったとおりでございます。しかしながら、現実問題といたしまして、先ほど来るる申しましたようにその前提が幾つかあるわけです。まず不法滞在者である。不法滞在者はそもそもこれは強制退去をされるべきものである。また、その人に対して医療を行うということにつきましては、制度上これを救済の制度として公式に認めることは困難であると。
 ただ、問題は、今先生も御指摘のように、患者が飛び込んできた、そしてお医者さんのお立場からこれを治療された、こういう問題の救済をどうするかということになってくると思いますけれども、これは先ほどお話しいたしましたように民法的な立場で解決をしていただくしかないのじゃないか、こういうことでございます。

○白浜一良君
 もう日本も国際国家なんですから、そういう方であったって、滞在されている方がいらっしゃるわけですから、これはもう当然人権上の問題、人道上の問題なんです。病気になって倒れているのに不法だからと、そんなことを言う。そういう国だから国際的に信頼されないわけです。大臣、もう少し前向きな答弁をしてくださいよ。

○国務大臣(下条進一郎君)
 法律の立て方からいえば私が今まで御答弁申し上げたとおりでございます。ですから、現状の法制では救済措置はございませんけれども、将来の問題として一つの研究課題として勉強をしてまいりたい、こう思います。

○白浜一良君
 研究課題ということはなかなかやらないということなんですね。私も新米ですが、よくわかりました、国会へ来て。ですから、経済大国、国際国家を標榜されるんですが、こういうことをきちっとできないと、これはやはり法律をつくる前提になるいわゆる人権また人道上の問題ですから、どうですか、これは総理、もっと前向きに考えていくべき問題ではないですか、これは一つの事例ですけれども。

○国務大臣(海部俊樹君)
 これにはいろいろの前提があってお話を申し上げておったと思いますが、今本当に苦しんでいる人が目の前にあったときに医師が助けるか助けないか、診るか診ないかということだけにスポットを当ててみますと、それはやはり診て助けてあげるのが人道上正しい答えだ、これはそこだけ見ればそう思います。ですから、それが今の法の仕組みの中でなかなか難しい問題もあると率直に認めながら厚生大臣も勉強し研究しますと申し上げておるわけでありますから、どうぞ厚生大臣の努力をひとつ見守っていただきたいと思います。

○白浜一良君
 具体的に前進することを期待しておきます。


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