123回-参-厚生委員会-02号 1992/03/26

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政府委員(末次彬君)/厚生省社会局長 末次 彬君
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○堀利和君
 在留資格が切れた外国人、短期滞在外国人が窮迫状態にある場合に、医療機関にかかっても医療費が払えないということでいろいろ問題がございます。この件につきましては、私は昨年の三月二十六日の委員会で取り上げさせていただいたわけです。一昨年までは生活保護法を例外的に準用されて、こうした事態に対して措置をとっていたわけですけれども、それが厚生省の口頭による通達といいますか、口頭による指示によって生活保護法を準用できないということになって、地方公共団体、自治体では大変困っているわけです。
 それで、確かに生活保護法の法理論上ではかなりこの問題はきつい、厳しい問題だろうと、憲法二十五条における、いわゆる属人法としての視点から見れば生活保護法を準用することは極めて難しいなということも、私自身昨年述べたところでございます。だからといいまして、こういった問題をそのまま放置していいかということになりますと、本来ですと国として十分責任をとった抜本的な対策を講じる必要性があると私は思うんです。
 しかし、今のところそれがなされない以上は、緊急避難的な措置として何かできる限りのところで措置を講ずることはできないだろうかということから、昨年私は、一つの提案としては社会福祉事業法の二条三項の五、生活に困窮する者に対して無料または低額な料金で診療を行う事業ということ、これが適用できないかという提案をさせていただきました。同時にもう一つは、大分古い法律でございますけれども、明治三十二年に制定されました行旅病人及行旅死亡人取扱法、これの適用はどうかということで御提案して審議させていただいたわけです。
 その後、一昨日都議会におきまして、社会党・都民会議の広田議員が都知事から答弁を引き出したわけですけれども、都としては対象範囲等不十分な法律ではあるけれども、こういった問題に対しまして、都としてこの行旅病人及行旅死亡人取扱法を適用する方向で実施主体である市町村とも協議検討するということが表明されたわけです。
 そういうことから、私はこの問題につきまして、政府、厚生省としての御見解をお伺いしたいと思うんです。抜本的な対策が講じられない今、少なくとも都がこういう方向に踏み出したわけですから、いわゆるチェックするとか、厚生省の方から口を挟むということではなくて、少なくとも見守るという姿勢が必要かと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府委員(末次彬君)
 いわゆる行旅法と言っております行旅病人及行旅死亡人取扱法という法律でございます。この法律は、救護者のいない行旅病人、これを対象としておりまして、要件といたしまして、いわゆる旅の途中の行き倒れという要件に該当する場合に適用し得るということになっております。
 したがいまして、東京都も以上の点を踏まえまして検討していかれるというふうに思いますが、現在のところ具体的な事例を承知しておりません。東京都の検討状況を当面見守ってまいりたいと考えております。

○堀利和君
 あわせて、もう一つお聞きしたいんですけれども、行旅病人及行旅死亡人取扱法が制定された明治三十二年に、同じく同年の六月十九日に内務省令の二十三号で、飢餓、凍餒、凍えている方に対しましては、今の町村長に当たりますけれども、十分医療的な措置を含めて手だてをしなさいという内務省令があります。ということから考えますと、行旅病人及行旅死亡人取扱法も、これは公的扶助としての性格があるのではないかと私は理解するわけですけれども、その点はいかがでしょうか。

○政府委員(末次彬君)
 何分先ほど聞いたばかりでございまして、省令そのものも内務省令ということで、時期も明治三十二年ということでございますので、現在この趣旨がどういうふうに引き継がれているのか、その辺は少し私ども時間をいただきまして、調べさせていただいた上で先生に御報告いたしたいと思います。

○堀利和君
 私は、この点について政府、厚生省として前向きに考えていただきたいと思うわけです。この行旅病人及行旅死亡人取扱法は明治三十二年という古い法律でございまして、大分眠っていた法律だったわけです。これを昭和六十二年に整備しまして、団体委任事務にしたわけですね。つまり国ではなくて地方公共団体の責任のもとに財政的にも置いたわけです。その二年か三年後の平成二年に、生活保護法で先ほどの医療費の問題でも例外も認めないという経過を見ますと、六十二年の団体委任事務にした時点からこういう事態を予測して、国としてはどうも責任回避に向いているような気が私はしないでもないわけです。
 抜本的な対策はもちろんですけれども、そういった後ろ向きでは大変困るわけですので、十分考えていだだきたい。しかも、この行旅病人の法律のルーツを見ますと、養老律令の七五七年ころに既に行き倒れ、あるいは病気で病んでいる方、それがたとえ犯罪者であっても逃亡者であっても、たとえそういう方であっても、言うなれば郡司、今の県知事に当たりますけれども、郡司が村人である市町村長に対して、医療等を含めた、当時の医療というのは大した水準ではないんですけれども、きちっと面倒を見なさいと、今から千二百年前からこういった流れがあるわけですよ。
 経済大国日本と言われ、国際貢献と言われている今日、こういうことが積極的に対応できないということであれば非常に情けないというふうに私は思います。抜本的な対策を求めるとともに、緊急措置としてのこの問題について私は前向きにやっていただきたい。きょうは時間がありませんので、他の質問をしなければなりませんので、とりあえずここでこの問題は打ち切りたいと思いますけれども、引き続きこれは政府に対して追及といいますか、要求していきたいと思います。


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