123回-参-法務委員会-10号 1992/05/19
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説明員(紺矢寛朗君)/厚生省保険局保険課長 紺矢 寛朗君
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○橋本敦君
そこで、次の質問に移っていくんですが、現在我が国には多数の外国人が在留していらっしゃるんですが、それらの皆さんの人権を守り、あるいは人道上我が国として適正な処置をしていくという上で、最近重要な問題として医療の問題がちょっと大きな問題になっているようでございます。
そこで、厚生省にお願いしたんですが、東京都立の松沢病院の担当者の方が「精神科救急における外国人事例の実態と問題点」という報告を出されました。私もそれをいただいて拝見をしたのでありますが、この松沢病院に入院をされた外国人患者の事例は、外国人総数がふえると同じ曲線カーブで増大をしております。つまり、多くの人が入院をするということになってきているわけであります。問題は、それらの多数の人の国籍その他を調べてみますと、開発途上国のケースの方が多いということが一つ。したがって、ほとんどの方々については生活保護の適用の弾力的運用が必要であったりあるいは医療費が支払えないという状況があったりして、それ自体が一つの社会問題化している。松沢病院の例で言いますと、全額自己負担可能であったのは全体の二九%にすぎないという報告が出ておるわけであります。
こういう外国人の皆さんの病気ということについて、基本的に病院や医者の立場でいえば、人道上これは診療を拒否するわけにまいりません。御存じのとおり、医師法でも診療拒否はできないことになっております。さりとて、これらの皆さんの医療費をどうするかということは医療機関にとって重大な問題になっているという意味で、この問題をどう対処するかということが問題になるわけでありますけれども、この松沢病院の報告書はこう言っております。
医療費や帰国費用等経済上の問題も深刻で、救急事例の大半は健康保険の適用外のケースであり、生活保護の道も閉ざされた現在、個々に対策を積み上げる以外に方法はない状態になっている。とりわけ、いわゆる不法滞留者についての入管法による通報義務や労働法上の権利をめぐって法律上の問題も生じてきている。これらの問題に対しては国としての対応が急がれるということを現場から希望しているわけですね。私もそのとおりだと思うわけです。
一方、日赤の関係での情報を新聞で見たんですが、日赤も外国人患者の治療費の回収ができないという問題が起こって、全国九十二カ所の直轄病院で近く実態調査をするということを決めたという報道がございます。この日赤の皆さんの御意見でも、これは厚生省に対する要望になるわけですが、在日外国人の皆さんのこういった問題での人道上の処置ということについては、第一義的には国が対応する方向を打ち出してもらいたいということを言っているようでございまして、まさに私は今日の日本の問題としても重大な社会問題になってきているというように思うわけですね。
そこで、厚生省はこういった問題について実態の調査をぜひ行っていただいて、そしていわゆる資格外滞在という場合であっても外国人を診察するという、そういう人道上の必要によって行った医療費等についてはどうするか、国の責任で早く決めて医療体制に支障がないようにしてほしいという希望もあるわけですが、厚生省としての対応についてのお考えをまず伺いたいと思います。
○説明員(紺矢寛朗君)
お答え申し上げます。
先生御指摘ございました外国人への医療の提供につきまして、私どもも重要な課題であるというふうに認識をいたしております。お話しございましたような各医療機関におきましてお取り組みをいただいておる事例があるというふうにも聞いておるわけでございます。また、それらの医療機関から国としての対応という声もいただいておるのも承知いたしております。
我が国の社会保障制度、今御指摘がございました健康保険、生活保護など基本的にはいわゆる内外人平等を原則といたしております。したがいまして、我が国におきまして適法に居住あるいは就労される方につきましては、国籍を持っておる日本人と同様な形で社会保障を適用するという考え方でございます。この点につきまして総務庁の御指摘もございまして、私どもとしてはいま一度の適用の徹底を図っておるところでございます。
しかしながら、今御指摘の事例の中でもございましたいわゆる不法に滞在あるいは就労される外国人の方に対する社会保障の適用につきましては、その前提となります居住や就労の取り扱いの問題あるいは出入国上の御当局の方のお取り扱いの問題などございまして、私どもとしては、現時点におきまして医療保障を行うことは基本的には困難であるというふうに考えておるところでございます。
しかしながら、先ほど御指摘ございましたように、医療機関の対応というものもございますので、私どもといたしましては、御指摘ございましたような事例、さらに今後とも状況の把握に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○橋本敦君
今おっしゃった状況把握に努めるということの具体的なやり方はいろいろあるでしょうが、基本的にはまず実態を正確に厚生省としても認識する必要がありますので、必要な実態調査はこれから検討してやってもらいたいと思いますが、やっていただけますか。
○説明員(紺矢寛朗君)
この点につきましては、総務庁あるいは関係省庁とも連絡をとりながら、私どもとしてはできる限りのことはしていきたいというふうに考えております。
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