126回-参-厚生委員会-04号 1993/03/29

------------------------------------------------------------
政府委員(瀬田公和君)/厚生大臣官房総務審議官 瀬田 公和君
------------------------------------------------------------


○木庭健太郎君
 もう一つ別の問題でございますけれども、これは外国人の医療保障の問題でございます。この問題については以前から大きな社会問題となって、このまま放置すれば国際的な批判も招くのではないかという指摘もありましたけれども、それ以上に困っておるのは実際の医療の現場でございます。医療の現場、お医者さんというのは、何人であろうと医療を受けたいという方があればそれを拒むことができないわけでございます。
 そういう現状の中で、こういう問題が起きている。不法就労者の治療費未払い問題というふうに言われておりますけれども、これは年々深刻化していると言わざるを得ないと思います。関係団体の調査を少し聞きましたら、既に全国でこの医療費の未払い額は二億円近くに達しているという話もあります。つい最近でございましたが、神奈川県ではこれに対して、支払い不能な外国人の救急医療費については自治体が全額を負担する制度を新年度から発足させるというようなことも既に出ておりました。
 この問題も一回論議したことがございます。前の厚生大臣であります山下徳夫さんから私はおしかりを受けました。日本は法治国家だ、不法就労者なんか我々の枠外だと、厳しく指摘をされました。私は、そうではないんじゃないか、やっぱり人道上の問題もあるんじゃないかと。それ以上に、実際にその治療に当たっている医療現場はこれはたまらないわけでございまして、その辺を厚生省としても考えなくてはいけないんじゃないかと思っております。
 やっぱり、自治体の臨時的措置に任せるだけではいけないんじゃないか。国としても、不法就労者というそのものの問題をどう解決するかという、政府全体が考えなくてはいけない問題がもちろんございます。しかしやはりこういう人道上にかかわる問題について、厚生省を含めて国の抜本的対策が求められていることに変わりはないと思います、一番声を上げなくてはいけないのは、本当に大変な目に遭っている病院を抱えている厚生省であると私は考えておるんですけれども、これについてどのような考えでいらっしゃるのか、再度見解をお伺いしたいと思います。

○政府委員(瀬田公和君)
 前国会から先生の御指摘を受けまして、その後いろいろと検討を続けているわけでございます。ただ、先生御承知でございますけれども、日本の国内に今合法的に居住する者につきましては、これは内外人平等の原則に立ちまして、国籍を問わず健康保険、国民健康保険その他の医療保障の制度で必要な医療が受けられるような仕組みがとられているわけでございます。
 ただ、我が国に不法に滞在する外国人につきましては、前国会でも御説明をさせていただいたわけでございますけれども、不法滞在が判明するとこれは強制退去等の取り扱いの対象にもなりますし、また医療保障を行うことそのことが不法滞在を容認助長するおそれがあるということによりまして、不法滞在を前提として医療保障を行うということは、政府の統一的な入国管理政策の方針もございまして、現時点では極めて困難であるというふうに考えております。
 ただし、一方におきまして、先生のただいまのお話もあったわけでございますが、不法滞在、不法就労という外国人の数は年々ふえ続けておりまして、現在、法務省の統計によりますと約三十万人に達しているという状況でございます。また、こうした不法滞在の外国人の医療費の未払いの状況を見ると、先生からも今御指摘がございましたけれども、平成三年度におきましては、全国の地方公共団体立の病院におきまして約一億円弱、また日本赤十字病院というふうなところでは約三千万円強というふうな報告も私たちに対してございます。
 先生御指摘のように、医療機関というものは正当な理由がなければ患者からの診療の求めを拒むことができないわけでございまして、したがって医療費の支払いが不確実だということをもって診療を拒否することはできないわけでございますので、こういう事態が続けば病院経営の危機を招くおそれもあるということは私たちとしても十分に承知をしているわけでございます。このため、不法滞在の外国人の診療費の未払いによる医療機関の負担問題の解決のために、現在内閣審議室その他関係省庁で打合会を持ちまして検討に入っておりまして、できるだけ早く結論を得たいと考えておるのが現状でございます。
 なお、神奈川県等のお話もございましたけれども、神奈川県等の条例におきまして未払いの診療費について医療機関に助成を行うための制度を考えているようでございます。これにつきましては、まだ細部を検討中であると聞いておりますので、当面その推移を見守っていきたいというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、できるだけ早く何らかの結論を得たいというふうに考えて、検討を続けているというのが現状でございます。

○木庭健太郎君
 要するに検討しているわけでしょう。

○政府委員(瀬田公和君)
 はい。

○木庭健太郎君
 長く説明いただきましたけれども、いろいろ立場が違うと思うんですよ。私は、人道的な面からやってくれ、それから医療機関の面からやってくれということを言っているわけですが、立場が違っても取り組みに向けて検討していただくことが大事なんですから、その一言をいただきたかったんですけれども、長く御説明をいただきましてありがとうございました。


前のページに戻る