126回-参-地方行政委員会-07号 1993/05/13
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説明員(伊原正躬君)/厚生省健康政策局総務課長 伊原 正躬君
政府委員(遠藤安彦君)/自治大臣官房総務審議官 遠藤 安彦君
国務大臣(村田敬次郎君)/自治大臣
国務大臣(国家公安委員会委員長)村田敬次郎君
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○西川潔君
次に、不法滞在外国人の未払い医療費の問題についてお伺いをいたします。
現在、我が国における社会問題の一つといたしまして外国人の労働者の問題がさまざまな機会に取り上げられておりますが、特に外国人の就労につきましては外国人単純労働者は認めないという政府方針にもかかわらず不法就労の外国人労働者が少なくないわけでございます。このような不法就労外国人は不法就労であるために、賃金の不払い、労災保険の不申請、医療機関による診療拒否、劣悪な雇用条件などの人権にかかわる問題が頻発しておるわけです。
こうした中で、最近、全国各地の医療機関で不法滞在外国人による医療費の未払いが問題となっておるわけです。昨年、全国自治体病院協議会が県や市町村が経営する公立病院を対象に外国人労働者を中心とする外国人患者の実態調査を行い、まとめた報告書を読ませていただきました。回答を寄せた全国六百六病院のうち、五分の一に当たります百二十九病院が外国人患者による医療費の未収金を抱えております。総額は何と九千百万円にも上るということでございますが、この問題についての現状を厚生省よりお伺いしたいと思います。
○説明員(伊原正躬君)
お答え申し上げます。
外国人の未払い医療費につきましては、先生御質問でお触れになりました全国自治体病院協議会の調査のほか、明らかになっているものとして日本赤十字社が平成三年度に調査を行っておりました。これによりますと、全国九十二の赤十字病院についての調査でございますが、二十五の病院において未払いが発生し、未収事例は百八件、未収金額は二千九百九十八万円となっております。
○西川潔君
現状のもとで、こうした不法滞在外国人によります未払い医療費の一部を自治体が肩がわりするという動きがぼつぼつ出てきております。例えば群馬県では、今年度から市町村などが共同で未払い医療費の七割を負担する医療費補助制度を創設したと伺っております。
今回の群馬県の取り組みにつきまして、またこの問題について自治体が取り組んでいる実態につきまして、自治省はどのように認識をされておりますのか、お伺いいたします。
○政府委員(遠藤安彦君)
先ほど御指摘がありましたように、全国の自治体病院協議会の調査で病院のうちの大体二〇%ぐらいがそういう外国人患者の未収金があるという結果が出たということで委員御指摘になったわけであります。私どももそういうように承知をしているところであります。
この問題について、確かに御指摘のとおり地方団体によってはまだ数は非常に少ないと私ども認識いたしておりますけれども、実態上緊急避難的な措置として団体独自に対応をしているというケースがあることも聞いております。これはやむにやまれずそういう措置をとっている団体があるわけであります。
ただ、この問題は、その地方団体の責任において解決すればいいという問題ではないんではないか。この問題自体、基本的にはやはり国がどういう措置を講じていくかということをきちっと方向づけをしていただかなければならないものではないかというように私ども考えているところでありまして、地方団体がそういう行動に出ているところもあるわけでございますので、関係各省庁とも十分協議をして、何とか国において適切な対応がなされるように努力していきたいというように思っているところでございます。
これは御質問に対して必ずしも十分な回答ではないかもしれませんけれども、なし崩し的に地方団体がやむにやまれずというような観点からやっていけば問題が解決するということでは必ずしもないというような認識を持っておりますので、やはり国としてしかるべき対応がとられるように関係省庁とこれから協議をしていきたいというように思っております。
○西川潔君
大変難しい問題でありますが、外国人の医療を無料化するということではなく、目の前で苦しんでいる患者に対しまして、不法就労者であるのかないのか、また医療費が払えるのか払えないのかということとは関係なく、結果といたしまして、人道上診療を拒否することが現実としてできないとなれば、診療を行った医療機関のみが負担をせざるを得ないということに、未払い医療費を抱える医療機関の救済が主な目的であるということだと思うんですけれども、単純労働を認めない法の建前のもとで多数の不法就労者が単純労働に従事しているのが現実であります。
こうした医療費の問題については、医療機関や地方自治体の負担のみに頼らざるを得ない現状にあるわけですけれども、国に対して補助金や交付税など何らかの財政措置を求める声が今後強くなってくるのではないかなというふうに思うんです。政府といたしまして、現在医療機関が抱えている不法滞在外国人による未払い医療費の問題について、また、今回この医療費補助制度を創設した群馬県を初めとして神奈川県なんかにもいろいろと出ております地方自治体の対応につきまして、そして、今後こうした自治体に対する財政支援措置について、それぞれどのようにお考えであるか、厚生省と自治省に最後にもう一度、そしてまた大臣の御決意などをお伺いしたいと思います。
○説明員(伊原正躬君)
お答え申し上げます。
日本国内に適法に在住する外国人につきましては、内外人平等の原則に立ちまして国籍を問わず所要の負担のもとに必要な医療が受けられるような仕組みがとられております。
しかし、不法に我が国に滞在する外国人につきましては、不法滞在が判明すれば、出入国管理及び難民認定法の規定に基づきまして強制退去等の取り扱いの対象になること、それからまた、医療保障をこういう方に行うことが不法滞在を逆に容認、助長するおそれがあることなどの理由から、不法滞在を前提として医療保障を行うということは私どもは困難であるというふうに考えております。
しかし、医療機関というのは応招義務というのがありまして、正当な理由がなければ患者さんの診療の求めを拒んではならないということになっておりますので、現実には診療の拒否をすることができないということが出てまいります。そのために、外国人が医療費を払えない場合、それが医療機関の負担になっているということは先生御指摘のとおり事例としてございます。
この問題につきまして、先ほどお触れいただきましたような群馬県及び神奈川県におきまして医療機関に助成を行う事業が開始されたというふうに承知しておりますが、実施方法等の細部についてはまだ両県とも検討中であるということであります。厚生省としてはその推移を見守ってまいりたいというふうに考えておりますが、この不法滞在外国人の診療費の未払いによる医療機関の負担についてどのような措置を講ずるかということにつきましては、医療保障と同様に不法滞在を容認するおそれがあるなど非常に困難な問題がございます。
先ほど自治省の方からもお答えいただきましたように、非常に多くの関係省庁にまたがる問題でございまして、現在関係省庁間の連絡のもとに検討を実施しておりますので、鋭意この検討を進めていきたい、かように考えております。
○委員長(佐藤三吾君)
簡潔にひとつ。
○政府委員(遠藤安彦君)
先ほどもちょっとお答えをいたしましたが、現実問題として人間が病気あるいはけがをする、それを病院が治療をする、これは当然のことでありますが、結局その医療費が支払えない。先ほども申しましたように、内外大正当な権利を持っている方々については、それは皆保険ということで治療側については費用負担についての保障が得られることでありますけれども、不法に滞在をしている人たちについてこれが法的にも制度的にも定まったものがないというところが問題であるわけでありますから、これについては、現実問題として医療側に費用負担を仰ぐという前提で一部の団体についてやむにやまれずそれを補てんをするという措置をとっているわけであります。
必ずしも地方団体で全部をかぶるべきものであるかどうかということははっきりしていないと思っているわけでありまして、その辺をやはり整理して、問題に対する対処のあり方というのを制度的にきちっと整理をしておかないと問題がいたずらに波及するだけになるわけでありますので、やはり関係省庁でこの問題をどうするべきかよく協議して検討し答えを見つけていかなきゃならない問題だ。大変難しい問題ですけれども、そういう方向で進んでいかなきゃいけない問題ではないかというように思っております。
○国務大臣(村田敬次郎君)
今、厚生省担当課長、それからまた自治省の総務審議官からお答えをしたとおりでありますが、不法滞在の事実が最近は三十万人と言われているんです。特に東京で言うと、代々木公園であるとか上野公園であるとか、私の地元の愛知県でも名古屋駅の周辺など密集をしておるということがございます。
合法的な滞在であれば、先ほど厚生省の担当官が言われたとおりでございますが、不法滞在についてどういうふうに対応するか。これは私はやはり不法滞在者であるから一切面倒が見れないということは言えないと思います。やはり人道的な見地からこのことを国も地方公共団体もそれから病院側も真剣に検討しなきゃならないと思っておりまして、まさに国際化の続いている時代の一番重要な問題点の一つだろうと思います。
よく厚生省、法務省、自治省と相談をして早急な対応で臨むつもりでございます。
○西川潔君
どうぞひとつよろしくお願いします。
私なんかは本当に無所属で院内会派でいつもお願いすることばかりですけれども、人間、愛に国境はないと思います。福祉の観点からいつもお願いすることばかりですけれども、いずれにしましても、いい方向へよろしくお願いします。
これで終わります。
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