129回-衆-予算委員会第四分科会-01号 1994/06/07

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○大内国務大臣/国務大臣厚生大臣 大内 啓伍君
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○上田(勇)分科員
 次に、少し話は飛ぶのですが、現在国内で働いている外国人の方々の医療の問題についてお伺いしたいと思います。
 現在、とりわけ大都市部を中心といたしまして、多数の外国人の方々がさまざまな仕事に従事しております。入国の経緯であるとか滞在資格の問題などいろいろな場合がありますけれども、こうした外国人が日本の経済の一部を担っているというのは、これは否定できない事実となっております。
 いわゆる不法に滞在している外国人が、例えば病気になったりけがをした場合に、現行の日本の医療制度の対象の外に置かれておりますので、現実にさまざまな問題が生じております。
 医療費の負担が高過ぎるために、重い病気にかかっていてもなかなか病院に行こうとしないという例とか、また、仕事でけがをして病院に運び込まれてもたらい回しにされたりした事例も聞いております。そうした人道上非常に悲惨な事例というのを私も数多く耳にしております。また、これは病院側の立場に立ってみますと、仮に善意で診療しても、その代金が保険でカバーできないので未払いのままになってしまって経営を圧迫してしまうという現実があるのではないかというふうにも思います。
 今、日本は、国際化を進めるという日本の立場といたしまして、こうした外国人が、たとえ不法に滞在しているとはいえ、基本的な人権にも属するような医療サービスの適正な最低水準のものは提供すべき義務があるのではないかというふうに考えます。
 多くの自治体におきましては、現実の問題として、実際にそういう病気やけがの外国人の方がおられた場合に、人道的な見地からさまざまな支援策を実施しているのが現状でありますが、日本の中で今さまざまな仕事に従事されている外国人の方々の問題というのは、これは国の医療や労働、外交等の基本政策にかかわるものであるというふうに私は認識しております。
 もちろん、これはもう医療だけの問題ではなくて労働政策、外交政策の問題でもありますが、厚生省だけで対応すべき問題とはとても思っておりませんけれども、厚生省としてこうした問題にどのように対処されていく考えなのか。また、それぞれ各自にさまざま対策を実施している自治体等に対して、厚生省からはどのような協力を考えられているのか、その点について御見解をお伺いしたいと思います。

○大内国務大臣
 御指摘の問題は極めて現実的かつ深刻な問題でございまして、先般来羽田総理からも、この外国人労働者に対する医療問題について真剣に検討してほしいという強い要請がございました。
 御案内のとおり、適法に我が国に滞在している外国人労働者につきましては、内外無差別の原則に立ちまして日本の各制度が適用されているわけでございますが、御指摘のように約三十万人になんなんとする単純労務に従事されているような外国人、不法滞在者といいますか、につきましては、これは不法滞在を助長することがあってはならないわけでございますので、そういう面から医療保険等の適用が現在はなされていないわけでございます。
 そうした状況によりまして、これらの不法滞在者が医療機関で受診した場合に、その費用が払えないとか未払いになるケースも生じておりますし、また、幾つかの事例を御指摘いただきましたように、人道上からも看過できないといったような問題もあるわけでございます。
 したがって私どもは、この問題につきましては、適法滞在者とのバランスという問題は一つ考えなきゃなりませんし、また、本人や事業主の責任との関係につきましても整理しなければなりませんが、やはり基本的には人道主義という立場に立ちましてこの問題を根本的に検討しようということから、今有識者から成る検討会というものの設置を平成六年度予算案の中で具体的に提唱しているわけでございまして、この予算をお通しいただきますと、直ちにその検討会が発足いたしまして早急に結論を出す、こういう体制にあることを御報告申し上げます。

○上田(勇)分科員
 こうした外国人の労働者の方々、アジアや南米の諸国から来られている方が多いわけですけれども、いろいろな滞在の資格の問題であるとか法的要件の問題については、当然のことながら、労働省さん、外務省さんを含めた検討がこれからいろいろ必要であるというふうに考えております。ただいま労働省の方との協議を開始されていることは大変に大きな前進ではないかというふうに考えます。
 特に、これら外国から来られる方々が、不法とはいえ現実の問題として今日本の産業構造の中に組み込まれていて、実際にいろいろな仕事の現場に携わっている。特に中小企業の経営者などの話を聞きますと、若干今は景気の落ち込みもありまして人材に余裕があるというものの、景気回復していけば、特に単純作業を中心にして、どうしてもそういう外国人の方々の手をかりないと採算がとれないというような声を聞くところであります。
 と同時に、そういった方が仕事の途中などでけがをした場合などに、経営者としてもそれを全部見るということになると非常に大きな負担になる。逆に、それをほっておくというのも人道上非常にたえがたいというような、本当に切実な声を伺っているところであります。ぜひとも、この点について早急に前向きな御検討をお願いしたいというふうに考えているところであります。


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