143回-衆-厚生委員会-05号 1998/09/16

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伊藤(雅)政府委員/厚生省保健医療局長 伊藤 雅治君
羽毛田政府委員/厚生省保険局長 羽毛田信吾君
宮下国務大臣/厚生大臣 宮下 創平君
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○金田(誠)委員
 それでは大きな二点目でございますが、外国人の感染症の患者さん等に対する医療の提供ということでお伺いをしたいと思うわけでございます。
 先般、港町診療所という、外国人のこういう患者さん方をかなり重点的に診ておられる、そういうところのお医者さんがわざわざ国会においでになりまして、今の外国人の方々はどういう実態かということで、私ども資料をいただいて説明を受けたところでございます。
 この資料につきましてはそのままコピーをして差し上げてございますから、実態などについては十分認識をされているというふうに思いますので、そういう立場で順次お尋ねをしてまいりたいと思います。
 まず、この新しい感染症予防医療法でございますが、この法律は在日外国人、特に不法滞在の方とか、あるいはオーバーステイになっている方とか、こういう在日外国人の方にも適用を当然のこととしてされるのだろうと思うわけでございますが、この確認が一点。
 そして、ここには適正かつ良質な医療を受ける権利といいますか、そういう人権保障規定もある、あるいは国、地方公共団体の責務も定められているわけでございますけれども、医療保険に加入していない外国人の方々の医療を受ける権利も含めてこの法律が適用される、当然のことだと思うわけでございますが、その辺のところをまずお聞かせいただきたいと思います。

○伊藤(雅)政府委員
 まず最初のお尋ねでございますが、本法案では「患者」と記されている規定につきましては、日本人、外国人を問わず、感染症の患者であれば適用されます。
 すなわち、この法案に基づく一類感染症または二類感染症の患者等に対する入院措置は、感染症の社会への蔓延防止の観点から行われるものであり、公的医療保険の加入者であればその残余の部分につきまして公費により、また、医療保険未加入者である場合については全額公費負担により入院措置に伴う医療費が賄われるものでございます。
 なお、この取り扱いにつきましては、結果的にその外国人患者等が日本に不法に滞在している者であることが判明した場合にあっても同様でございます。健康保険に加入していない外国人についても、入院措置に伴う医療費は、本法の適用により全額公費負担によって賄われるということでございます。
 そこでお尋ねは、法第三条の「国及び地方公共団体の責務」に「良質かつ適切な医療」とあるが、これは不法滞在者にも適用されるのかというお尋ねであったと思います。
 この三条の規定は国及び地方公共団体の責務として「感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」そういう規定でございまして、この適用は対象者の国籍や滞在資格によって相違が生ずるものではないという理解でございます。

○金田(誠)委員
 まず、この法律自体は外国人の方を除外しているものではない、あまねく感染症の患者さん等に適用されるということが確認されたろうと思うわけでございます。
 そこで問題は、第三条国の責務として「感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」ということになっているわけでございますけれども、したがって、この法律が施行された暁には、在日外国人の不法滞在であろうがオーバーステイであろうが、そういう方々にはこの良質かつ適切な医療が提供されるようになるのだということだろうと思うのです。
 そこで具体的にお聞かせをいただきたいわけでございますが、健保や国保という医療保険に加入していない外国人に対しては、先ほどの答弁では公費によってという御答弁もありましたけれども、三十七条は、一類、二類の感染症の患者さんには公費によって、健康保険に加入している分はその保険によってという、保険と公費の使い分けの規定があるわけですね。
 しかし、一類、二類以外の感染症にかかった場合、例えばO157に罹患をしたとかあるいはHIVに感染をしたとかいう外国人の患者さんの場合で、国保にも入っていない、健保にも入っていないという場合で、なおかつ御自身でも支払い能力がないという場合は、医療はどのように提供されることになりますでしょうか。

○伊藤(雅)政府委員
 健保、国保に加入してない外国人が新感染症法の三類、四類の感染症患者になって医療を受けたときの医療費の支払いはどうなるか、こういうお尋ねだと思います。
 先ほどもお答えいたしましたように、本法案におきましては、法律に基づいて入院いたしました一類感染症、二類感染症及び新感染症の患者に対しましては、医療に要する費用を都道府県が負担することと規定されており、これは医療保険各法との調整の規定がございますのはさっき申し上げたとおりでございます。
 そこで、三類感染症、四類感染症につきましては、この法律におきましては、感染力や罹患した場合の重篤性などの観点から法律に基づく入院は必要ない、そういう整理をしているところでございまして、医療費の支払いという観点からは一般の医療と同様の扱いで行われる。つまり、三類感染症、四類感染症の場合は他の病気の患者さんと全く同じに扱うということが基本的な考え方でございますので、そこは全く差別なくといいますか、この感染症新法による特別の扱いかないというのが、制度上そうなっているということでございます。

○金田(誠)委員
 しかし、一般の医療と同じであれば困るのではないでしょうか。承知でそういう御答弁をされているのだろうとは思うわけでございますけれども。
 一般の患者さんと同様、一般の医療と同様な扱いになるのですよといった場合、日本国籍の人間であれば国民皆保険でございますから健保か国保かどっちかに必ず入っているということになるわけですね。無保険者というのは原則いないことになっているわけですが、在日外国人の方々も無保険者というのはいないことになっていますか。そうではないだろうと思うわけですね。この法律自体はそこに不備があるのではないか。したがって、早急に在日外国人の三類、四類感染症に対して医療を提供できるような手だてを講じなければならないのではないかということが、申し上げたい結論でございます。
 それが、第三条に書かれております「国及び地方公共団体の責務」ということで、国の責務としても当然のこととして、感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講じなければならない、講じるよう努めなければなら
ないですか、いずれにしても義務があるわけですよ。それは、三類、四類は除くとか在日外国人は除くとかということは一切ないわけで、まさにすべて同一に、三類、四類であろうが外国人の方であろうが、国の責務として適切な医療を講じなければならないわけです。
 そこでお尋ねをしたのが、それじゃ国保、健保に加入していない外国人の方はどうやって医療を受ければいいのですかとお尋ねをした。一般の医療と同じですというお答えでございますけれども、そのお答えであれば、お医者さんにはかかれない、ただでやってくれるという奇特なお医者さんがあれば別ですが、そうでない限りは医療を受けることができないという御答弁になるわけですが、そういう確認をさせていただいてよろしいのでしょうか。

○伊藤(雅)政府委員
 感染症新法におきます三類感染症の患者さん、四類感染症の患者さんについては一般の医療の患者さんと同様の扱いで行われるということは、制度上そのようになっていると今申し上げたとおりでございます。
 ただ、この感染症新法の観点から申し上げますと、例えばエイズでございますとか性感染症につきましては、先ほども申し上げましたように特定感染症予防指針というものをつくりまして、その中で、検査法や治療法等に対する研究の推進でございますとか医療の提供体制の整備などを通じまして、医療現場において良質かつ適切な医療の提供を行う、そういうことがございますけれども、直接患者さんなり医療機関にこの法律に基づいて一類なり二類と同趣旨の保険給付なり公費負担を行うということは、制度上想定していないところでございます。

○金田(誠)委員
 したがって、三類、四類感染症にかかった外国人の患者さんで、健保にも国保にも入っていない、個人的にも支払い能力がない方は、ただで診てくれる医療機関を除けば適切な医療は受けられない、こういうことでよろしいのですか。

○伊藤(雅)政府委員
 その点につきましては、三類、四類の感染症患者さんだけでなくて、我が国におきます健康保険未加入者の外国人医療全般の問題でございまして、この点につきましては厚生省として以前検討した経緯もございますが、現時点におきましては、明確な対処方針といいますか、まだ示し得ていない段階でございまして、何とぞ御理解を賜りたいと思います。

○金田(誠)委員
 明確な対処方針を示していないという現状については理解をしているわけです。
 そこで、再度それじゃ確認をさせていただきますが、外国人の方で、健保、国保に加入をしていなくて個人的にも支払う能力のない方が感染症にかかった場合、一類、二類とはっきりした場合は公費で見られるかもしれませんけれども、そうでない感染症の場合は、この法律に言う「良質かつ適切な医療」は受けられないということを先ほど来確認をさせていただいているわけでございますが、そのとおりですというふうにお答えいただければ結構でございます。

○伊藤(雅)政府委員
 法律の解釈上はそのとおりでございます。

○金田(誠)委員
 そういうふうになっているわけです、大臣。しかし、法律には、第三条国の責務、「感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうになっているわけです。これは法律に基づいて、今の何の制度もない状態は違法の状態――違法というか、お役人さんが言うのであれば、恐らく違法とはにわかには言い切れないとかいうことをおっしゃるかもしれませんが、少なくとも適法で問題のない状態ではない、非常に問題のある状態だということだけは確かだろうと思うわけでございます。
 今、三類、四類の感染症の患者さんで、健保に加入していなくて支払い能力のない方は良質かつ適切な医療が受けられない、これが現状であるということを確認をいただいたわけなんですけれども、それじゃどうするかということをこれから伺ってまいりたいと思います。
 そういう状態であれば、健保、国保に入れればいいわけでございます。保険局長、いらっしゃるわけでございますけれども、そういう不法滞在あるいはオーバーステイという方が病気になった、こういう状態で、国保に入っておらない、健保にも入っておらないという場合、この方がもし日本人であれば、役所の窓口に行って保険証を下さいと言うといただけるわけです。それがいいか悪いかというと、私、かねがね問題点は指摘はしております。指摘はしておりますけれども、まずは現状としては、日本人であればそういう手だてがある。
 ところが、外国人では、そういう手だてがあるのでしょうか、ないのでしょうか。三類、四類、健保にも入っていない、国保にも入っていない、支払い能力もない方は医療を受けられないというところまでは確認させていただいたわけですが、それじゃどうするかというとき、一つの方法として国保にすぐ入ればいいじゃないか。外国人登録も恐らくないといったような方が、外国人登録と国保の加入と同時にできるとか、そういう道筋がもしあるのであれば、それはそれで、いい悪いは別にして、とりあえず医療は受けられるということになると思いますが、その辺のところはどうなんでしょう。

○羽毛田政府委員
 お答えを申し上げます。
 医療保険という形での医療の提供ということで申し上げれば、結論的には、先生おっしゃるようないわゆる不法滞在だとかオーバーステイの方につきまして、国民健康保険が適用されるということにはなっておらないというのが結論でございます。
 何がゆえにそうなっておるかということにつきましては、国民健康保険は市町村が行っておるわけでありますけれども、その区域内に住所を有しておられます方を被保険者といたして強制的に保険に加入をしていただくということで、それらを地域社会のいわば一員とみなして、いわば相互扶助で成り立っているという社会保険制度でございます。
 したがって、被保険者の方は市町村に生活の本拠を有しておられる方を対象にするということで、不法滞在等の外国人の方につきましては、国内にその生活の本拠を置くことができるという法的地位を有しないということで、法文上も、国民健康保険法の五条に「住所を有する者」というのを条件にいたしておりますものですから、それは先ほど結論で申し上げましたように、そういう場合には国民健康保険の適用対象という形にはならないというのが、事実としてのお尋ねについてお答え申し上げられるところでございます。

○金田(誠)委員
 国保ににわかに入って、そちらの給付を期待をするということも事実上不可能だというお答えだと思います。
 それではどうするかということでございます。そのどうするかという答えをきょうばいただけるのではないかなと思って、連休前に実は、質問取りというのでしょうか、いらした方にはくれぐれもということでお願いをしてあったのですが、その答えが現時点ではいただけなくて残念ですけれども、質問時間の終わる二時までには何とかその答えを示していただければありがたいと思うわけでございます。
 この公衆衛生審議会の意見書の四ページでございますけれども、ここに「患者・感染者の人権の尊重」という項目がございます。その人権の中には「一人一人が安心して医療を受けて早期に社会に復帰できる等の健康な生活を営むことができる権利」というのも、その権利の中に当然含まれておるわけでございまして、最後に、「なお、国内に居住一滞在する外国人についても、国民と同様の取扱いとすることが必要である。」という指摘があるわけでございます。
 これはもっともな指摘だろう。外国人であるから、住所を有しているとか有していないとか、滞在期間が切れたとか切れないとか、いろいろあったにしても、人間として生きている以上は、病気になって、特に感染症になったら、安心して医療を受けて早期に社会復帰できる権利、この個人の権利という側面から見ても、あるいは先ほど来転換することになった社会防衛、感染防止という観点から見ても、感染症にかかっている方が医療も受けられない、放置されているという状況はどんな観点から見ても決して好ましいことではないですし、あり得べきことではない。したがって、審議会の意見も、「国内に居住・滞在する外国人についても、国民と同様の取扱い」をということでわざわざ明記をしているわけでございます。
 これらを受けて、さあどうするということでございます。現時点では国として何ら対応する手だてはないということでございますが、こういう指摘を受けて、新感染症予防医療法が近々成立するという状況を受けて、どう対応されますでしょうか。
 今の制度では国保の適用はないのですよということもわかりましたけれども、国保の適用をさせるか、あるいは別途国として何らかの措置を講ずるか、いずれにしても、このままでいいということではないということだと思います。その辺のところはどうでしょう、この感染症の公衆衛生審議会の意見も踏まえて、さあどうするべきかというあたりをお聞かせいただきたいと思うのです。

○伊藤(雅)政府委員
 今先生御指摘の公衆衛生審議会の意見書、「新しい時代の感染症対策について」の四ページに記載されております「国内に居住・滞在する外国人についても、国民と同様の取扱いとすることが必要である。」これは明確にこの報告書に記載されているわけでございまして、これは、具体的にこの法案におきましては、入院措置の際の手続の保障、医療費の負担並びにプライバシーの保護等につきまして、報告書の内容が反映された形になっているわけでございます。
 ただ、先ほどから申し上げておりますように、三類とか四類につきましては、感染症の拡大を防ぐという観点から行政に基づく規制としての入院措置というのが必要ないことから、通常の医療と同じ扱いになっているわけでございますが、それを御理解いただいた上で、さらに何か新しい対応策はないのかという御指摘だと思います。
 その点につきましては、私の方から具体的なことを現時点で申し上げることはなかなか難しいわけでございますが、今後、これは厚生省全体として受けとめまして、医療に係る諸制度の運用方法なり適用方法を検討していくという中で何らかの方策を検討、研究するということではなかろうかと思っております。

○金田(誠)委員
 にわかに、これこれこういうことでこうしますよという答弁にまではなかなか至らないだろうなということでは理解をいたします。
 しかし、単なる検討ということではいかがなものか、少なくとももっと明確にその方向性を示した上で、いついつまでに、例えばこの法律が施行されるときにはその裏づけとして当然施行されるなどという具体的な回答を欲しいものだなと思うわけでございまして、そういう立場から少し確認をさせていただきたいと思います。
 まず、今申し上げましたこの感染症対策についての意見の中で、国内に居住、滞在する外国人についても同様の取り扱いをすることが必要であるということの意味は、一類、二類が他に蔓延をするから、その防止のために強制的な措置を要するから一類、二類については必要なんだという意味ではない。これは、三類、四類であろうが、安心して医療を受け早期に社会に復帰できるなど健康な生活を営むことができる権利ということで書かれているわけでございまして、それについて外国人についても同様な扱いということが記載されているわけでありまして、一類、二類ということにどうも局長はこだわっておられるようでございますが、ここで指摘される意味は、一類、二類はそうしろとかではなくて、すべからく良質かつ適切な医療を受ける権利という観点に立って、それが外国人にも適用されるように必要な措置をとるという意味合いだというふうに厚生省としても受けとめているということをまず確認していただきたいと思います。

○伊藤(雅)政府委員
 御指摘のこの三条の「国及び地方公共団体の責務」に「良質かつ適切な医療」とありますのは、この法律の基本的な理念をあらわして地方自治体の責務を規定しているというふうに理解しておるわけでございまして、この条文の適用は対象者の国籍や滞在資格によって相違が生ずるものではないという理解をしております。

○金田(誠)委員
 したがって、在日外国人、それが適法か違法か、あるいは感染症の種類が一類か四類かなどということではなくて、すべて良質かつ適切な医療を受けるということは権利として外国人にも保障されるべきであるという認識に立つということでよろしいですね。

○伊藤(雅)政府委員
 この法律の中では、不法滞在者も含めて、外国人も含めて、権利という形では規定をしておりませんが、国及び地方自治体の責務といたしまして、国籍や滞在資格を問わず、良質かつ適切な医療を提供することは国及び地方公共団体の責務であるというふうに規定をしているわけでございます。

○金田(誠)委員
 したがって、これから検討をするに際しては、そうした方々に例えば保険適用という方法に道を開くということもあるかもしれません、あるいはそこまで至らずとも、別途何らかの公費負担等の措置をとれるかもしれませんけれども、現状ではただで診てくれる医療機関以外は医療を受けられないという状況なわけですから、そういう状況を解決をする、そのために検討をするということでもちろんよろしいですね。ぜひそのことを確認をさせていただきたいと思います。

○宮下国務大臣
 ごもっともな質問でございまして、私も厚生大臣になりましてから、この種の問題、そう詳しくはございませんが、お聞きして、なるほど、いろいろ問題があるなということを感じています。
 つまり、滞在の外国人でございましても、適法に滞在をしている外国人もいらっしゃいます。この方々は、今局長の言われましたように、保険システムを利用しまして、そして保険適用もございますし、自己負担分は本人負担ということで三類、四類についても仕分けされていると存じますが、不法滞在外国人ということになりますと国保にも加入できない。場合によると、健保の方であるいは事実上そういうことは可能かなという感じもしないではございません。非常に数が多いですから、実際中小企業等に就労している不法滞在外国人と言われる人たちも。これは否定できない事実だと存じます。そういう不法滞在の外国人の方々はどうかということですが、一類感染症と二類感染症は公費負担でやるということが原則でございますから、これは一応不法であろうとなかろうとそこは問わないという仕分けになっておりますが、三類と四類はやはり自己負担を原則にするというのが医療法の建前だと思うのですね、保険に入っていない場合は。
 委員の方の御指摘は、資力が絶対的にない、ただでなければかかれないんだという前提に立っておられますけれども、そこは少しよく研究してみないと。不法滞在撤去を要求するとか、いろいろなケースがあると思いますけれども、事実上定着している場合もありますので、その場合はどうするかというのは依然問題が残ると存じますから。
 これは今までも検討会をやっていろいろ検討して、救急医療等につきましてはある一定限度を超えるものは国が公費で見るということもございます、救急医療センター等に運び込まれた場合。したがって、それらとの均衡等もいろいろございますから、今後、これは不法滞在者をどう対応していくかという広い観点を含めて、その中で医療の給付をどうするかということを考えていくべきだと思います。
 ただ、私は個人的に、今度の新感染症予防法は病気を蔓延させないという一つの大きな使命がありますから、そういう観点も加味しながら検討させていただく値打ちのある話だなというように感じます。

○金田(誠)委員
 せっかく大臣御答弁いただいたわけですが、ちょっとくどいようで申しわけなく思いますけれども、もう少し聞かせていただきたいと思うわけでございます。
 無保険者の場合は自己負担が原則ということは、そのとおりなんだろうと思います。問題だと思いますのは、自己負担で払える方はいいわけですけれども、とても払える状況にない方が非常に多いということで問題指摘をさせていただいているということをまず御認識をいただければありがたいなと思うわけでございます。
 どういう聞き方がよろしいんでしょうか、まず、これは法律に基づいて、どうこの法律を運用するかという観点から聞かせていただきます。
 この法律が施行されたとします。第三条には、「感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」という、国に義務が課せられることになるわけでございます。そして、今現実に想定をされているというか今現在でも起こっていることは、不法滞在の外国人の医療がよほど奇特な病院などでなければなされておらない、一般的にはたらい回しとかいろいろな状況になっているということでございます。これがまず解決すべき問題だということを明確にしていただきたい。解決すべき問題であって、本来であれば新法が施行されたと同時に国の責務としてそのことが果たされる、少なくとも新法施行に合わせてこのことが何らかの措置がとられる、そのための具体的な検討がなされる、先ほど来の御答弁というのはそう受けとめてよろしいものなんでしょうか。

○宮下国務大臣
 私の申し上げたのは、新法に基づく医療給付が何人も問わず行われることが必要であるということは、三条の今御議論のとおりでございます。ただし、その費用負担をどうするかという問題だと思うのですね、わかりやすく分解してみますと。
 そして、費用負担の場合には、適法な滞在外国人は保険等に入っておりまして、その部分は保険料も払いながら給付を受けておる、自己負担分は払うということになっておるわけでございまして、それらとの均衡と言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、不法滞在者の費用負担のあり方については、不法滞在者は資力がないからと決めつけて全部全額公費負担とかなんとかいうことはいかがかなという感じを率直に持ちます。負担できる人には負担していただくというのは、これは当然だと思います。
 どうしても負担できない人たちについては、この感染症の重要性にかんがみて、公費ないしはそれに準ずる形で何らかの方法を検討する、こういうことではないかなというように思います。

○金田(誠)委員
 私も冒頭からそういう趣旨で申し上げているつもりでおりまして、払える方にまで全部公費でというつもりはございません。
 問題になっておるのは、払えない方がどうなのかということでございまして、払えない方に対して何らかの措置をとらなければならない、それが公衆衛生審議会からも指摘をされていることであり、今、それを受けた形でできた法律の中でも国の責務として規定をされているということだろうと思うわけでございます。
 「良質かつ適切な医療を受けられるように」ということは、医療機関などが医療忌避だとかそういうことがないように、あるいは治療薬の開発なども適正に行われるということはもとよりですけれども、当然医療費の支払い、負担区分といいますか、だれがどのように負担をするのか、それが可能な形で制度化されるということなども含んでいると思うのです。良質かつ適切な医療が受けられるようにするということは、そのとおりだと思うわけでございます。
 そこで、そういう観点からしますと、大臣の御答弁と私の立場はそう変わってはいないだろうな、こう思って受けとめさせていただきました。そうした場合に、御自身で負担できる方は別として、そうでない方に医療費の支払いをどうしていくか。そのことは、この法律あるいは意見、これらに基づいて当然制度化されるべきものと思っておるわけでございます。先ほど来、検討いただけるということでございますけれども、その検討の中身は、そういう立場に立って、そしてこの法律の施行までに検討されるということで理解をしてよろしいものでしょうか。

○宮下国務大臣
 不法滞在者ということでございますので、医療の分野を超えてどう対応するかという国として大きな課題があると思うのですね。そういう位置づけの中で、特に医療関係においてはこれは感染をするというような非常に重大な問題を含んでおりますから、そういう視点も踏まえながら検討すべき課題だなというように私は感じております。
 ただ、委員の御指摘のように、この法律の施行、来年の四月一日だと思いますが、それまでに結論が得られるかどうかという点についてはちょっと明確にお答えできませんが、検討はさるべき話だというように理解しております。

○金田(誠)委員
 余りすっきりしたお答えにならなくてちょっと残念でございますけれども、大臣、これは私は国の威信にかかわる問題だろうと思っているのです。
 諸外国、これは資料も差し上げてございますけれども、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカ、それぞれ何らかの国としての手だてがされている。州によったり県によったりしてさまざまな違いがあるところもあるようでございますけれども、何らかの手だてが講じられているということだろうと思います。
 特に、日本の場合、不法滞在になっている外国人、オーバーステイになっている外国人の方々、建設現場その他でそうした労働に従事をされて、滞在期間が切れて、被用者保険などにも入れないという状態の方が多いのではないか。要は日本社会の下支えといいますか、そういう労働力として日本社会にも貢献をされる、しかし、不法滞在とかオーバーステイとかいう法律に抵触するがために、社会保険、社会保障の適正な手続をとることができないという方々だろうと思うわけでございます。
 本来、オーバーステイあるいは不法滞在等については、入国管理だとかそういう側面からさまざまな措置がとられるべきだということを私は否定しようとも何も思っておりません。それは、そういう観点から適切に措置がされるべきことだろうと思うわけでございます。
 しかし、いずれにしても、現実に我が国に滞在をしていて病気にかかるといったときに、一人の人間として、人道的な立場から適正な医療の提供というものをしてさしあげることが、これは日本という国家の威信にかけて私は当然必要なことだろうと思うわけでございまして、そのことがこの感染症予防法を、不法滞在であるとか外国人であるとかいう理由をもって特別な規定は一切置いておらないということにも通じてくることだろうと思うわけでございます。
 不法滞在というものがあり、そうした観点から云々という御答弁もありましたけれども、そうした観点からしかるべく措置をとる、例えば先般もコンテナで入ってこられたとかいろいろなことがございます、そうした方々にはしかるべき措置をとる。あるいは滞在期間が切れた方、御本人を含めてあるいは事業主の方を含めて、法律は法律としてきちんと運用するということは当然のこととして、その上で、人道的な観点から良質かつ適切な医療を提供することが当然のこととしてこの法律では要求をされているということを再三申し上げておるつもりでございます。
 その辺について御同意いただけるとすれば御同意いただいた上で、私はこの法律の施行と同時にということを申し上げましたけれども、それが多少前後したからどうこうと言うつもりはございません、そうした一定のめどをつけての、検討の基本的な考え方ということをいま一度整理をしてお示しいただきたいなと思うわけでございます。

○宮下国務大臣
 不法滞在外国人に対する医療の諸外国の例等も、今資料をちょっと拝見をしておりましたが、国によりましては不法滞在者の外国人の医療費は自費である、ただし、支払い能力がない場合は医療機関等が負担を背負うとか、あるいは主に公的医療機関が負担するとかいうことがございます。また、ドイツなんかは別個の制度を設けておりまして、一般の社会扶助制度とは別体系の難民認定申請者給付法というようなものを定めておりまして、不法滞在外国人はその扱いをしているというような点もございます。
 私の方も大変これは重要な点だと思います。私もそんな感じを持ちました。したがって、よく検討させていただきまずから、期限はちょっと御勘弁願いまして、何とかこの感染症が立派に役目を果たせるようにしなければならぬと思いますので、そういう視点から検討させていただきます。

○金田(誠)委員
 共通の理解に立つことができたなと思ってございますので、ぜひひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
 その上でまたこれを申し上げると、何かまたかさにかかっているみたいな受けとめられ方をすると困るなと思いながら実は申し上げるわけなんですけれども、感染症という切り口から今質問させていただきました。感染症予防法あるいはそのもとになった公衆衛生審議会の意見、これらを根拠として私は質問させていただいたわけでございますけれども、実は、病気というものは、感染症であるのかないのかということは診断を受けてみなければわからない。熱が出た、下痢をした、さまざまな症状が出た、それが果たして感染症なのかどうなのかということは、お医者さんにかかってみて、感染症として診断されるというのも結構時間を恐らく要するのかもしれません。O157がただの下痢だとかいうことの症状から出発をするのかもしれません。したがって、ぜひこれはあわせて検討いただきたいということでございます。
 まず第一義的には、感染症予防医療法に基づく制度をきちんと整えていただく、これが第一義でございますけれども、そもそも感染症か感染症でないかというものは、そういうことでございます。お医者さんにがかった、診断の結果感染症でないから帰ってくれ、もう医療費が払えないんだったら置いておけないというようなことには現実問題としてはなりにくいだろう、こう思うわけでございます。
 諸外国の状況も申し上げましたし、あるいは東京近辺の都県、東京、千葉、埼玉、神奈川、群馬、あるいは兵庫にも制度があるということなんですが、特に外国人の方が多く居住されている地方自治体では独自の補助制度などを策定をしているわけでございます。この中でも感染症には限定をしておらない、この資料で見る限りは感染症限定というものはないわけでございます。
 したがって、国として制度化する場合も、病気というものはそもそもかかってみなければということからして、感染症だから公費で見た、そうでなければ見ない、出ていけということになるものでもないということからして、恐らく病気そのものを対象とする制度にならざるを得ないのかな。というより、私から言わせると、私の立場からすれば、ぜひならせていただきたい。感染症に限定するのではなくて、病気一般というものに対して、国家の威信というものにかけて、人道的見地からしかるべく制度を検討していただきたい、感染症はもとよりでございますけれども、そういう思いでございます。この思いについて一言だけ御答弁いただければありがたいと思います。

○宮下国務大臣
 御指摘のように、東京、千葉、埼玉、神奈川、群馬等では、地方自治体が独自の補助対象等を定めまして、対象外国人に対する医療の補助制度をやっております。
 私も拝見いたしまして、これは感染症だけに限ったものではないなということも理解できます。そういう意味で、先ほど検討すると申しましたが、国、地方との関係、そういうこともきちっと整理をして、どういう体系がいいかということをこれから検討してまいりたいと思います。

○金田(誠)委員
 どうもありがとうございます。ぜひひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。


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