145回-参-法務委員会-09号 1999/05/06
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政府委員(羽毛田信吾君)/厚生省保険局長 羽毛田信吾君
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○中村敦夫君
ちょっと別の質問になりますけれども、これは厚生省関係でしょうか、外国人労働者の医療問題ということについてお尋ねします。
外国人労働者というのは、合法的滞在でも不法滞在でも国民保険には入れないわけですね。特に不法滞在者は社会保険にも入れないということがあります。だからといって、普通にお金を払って行くには余りにも高過ぎてだめだ、こういうことでさまざまな問題が起きております。最近では、もう民間がボランティアとして、不法滞在外国人の医療費を相互扶助する共済組合というようなものを横浜につくって大変話題を呼んでおります。民間のこうした国際問題に対する取り組みと比べて国の対応というのはかなり鈍感で形式主義に陥っているんじゃないかというふうに考えるんですが、このことに関してどうでしょうか、当局は。
○政府委員(羽毛田信吾君)
お答えを申し上げます。
まず、我が国の医療保険制度におきます外国人の方々の取り扱い一般論を申し上げたいと存じます。
我が国の医療保険制度におきましても、過去いろいろな経緯はございましたけれども、今日の段階におきましては、適法に在留をされます外国人につきましては、健康保険の場合には、これはサラリーマンの保険でございます、その適用されます事業所におきまして常用雇用の関係にあります方、これは国内の人たちも同じですけれども、こういう関係にある方については健康保険の適用対象となりますし、それから、健康保険の適用を受けない方でありましても、我が国に住所を有するということになりました方々につきましては国民健康保険を適用するという関係になってございます。
ただ、今お挙げございましたような、現実問題として多くの不法滞在の外国人の方々がおられます。この方々につきましては、引用されましたような形で、確かに現在の医療保険制度の対象にならないということになりまして、互助制度といいますか互助共済の制度等が適用されているもの、あるいは治療を受けながら医療費を払わないという形の中で医療機関にしわ寄せされている、医療そのものを受けるのを我慢されるというようなケースもあると思います。
大変そういう意味では悩ましい問題なのでございますけれども、一方におきまして、こうした不法滞在の外国人の方々につきまして医療保険制度をそのまま適用していくということになりますと、これはまた不法滞在ということのゆえにいろいろな問題がやはり出てくるということで、厚生省におきましても、この問題、大変悩みまして、平成七年に有識者の方々を集めました懇談会等を開いていろいろ報告をいただいたわけであります。
その中でも、不法滞在外国人につきまして新たな制度的対応を行うことはかえって不法滞在を助長するおそれがありはしないか、こういうような御議論もございました。そうした中で、その報告書の中でも、今後の方向としましては、国あるいは地方自治体、医療機関などの関係者が、それぞれかかわりの程度を広げていくということによりまして問題点をできるだけ小さくしていくということが現実的な対応ではないかということをいただきました。
それを受けて、厚生省としましても平成八年度に、公的医療保険制度に加入をしておられない外国人に対しまして、救急医療費、非常に救急の医療を受けられたときの補助制度を設けるというような形の対応をいたしてまいっております。
今申し上げましたように、これに真正面から取り組むこともなかなか難しゅうございますけれども、今後とも必要に応じまして、医療保険制度のみならず全体的な医療に係る諸制度の中で、そういった適用のあり方というようなことを引き続きまた検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○中村敦夫君
お答えが大分長かったので質問できなくなっちゃったんですが、基本的に、不法滞在者でも人権というのはあると思うんです。人権というのはそういうものなんですよ。入管法違反であっても、不法滞在者が健康と身の安全を求める権利は私は同時的にあると思うんです。しかし、それが制度的にかなり縛られて両方とも無視されているということに問題があります。
例えば、不法滞在者が病院に行くと入管に通告されるというケースが多い。ですから病院に行かない。そうすると病状が悪化し、大変な生命の危機に陥るというようなこともあります。それから、エイズ患者などの場合も、ほかの怖い伝染病もそうですけれども、やはり問題になるから病院に行かないということになります。そうすると、そういう人々が日本社会に潜伏してしまって日本の社会そのものにまた危険をもたらすという状況があると思うんです。
ですから、私は、医療行政と入管行政というものが一体化しない形で、独立して行われるという条件が非常に必要だと思うんですけれども、その点、どうでしょうか。大臣でも入管局長でも結構ですし、厚生省としてはどう考えるか。
○政府委員(羽毛田信吾君)
先ほども申し上げましたように、大変難しい問題です。確かに、医療が必要であるという状況については、これはそういう状態になったときのその方々の御苦境といいますか、そういうことについて私どもの方も思いをいたさないわけではないわけでありますけれども、一面において、不法入国、不法滞在という形の場合に、そういったことを抜きにして真正面から制度的な対応を図るということもなかなか難しいということで、有識者の方々の御議論の中でも、やはりそれぞれがかかわりの程度を広げることによって問題点をできるだけ小さくしていくことが現実的な対応ではないかということをいただいたのも、いろいろ苦渋の上での御報告であったと思います。
そうした中で、非常に緊急を要するような救急医療のような場合に、先ほど申し上げましたような補助制度をつくるというような形で現実的対応をいたしておりますけれども、こういった形の中で一歩一歩問題解決に取り組むよりなかろうかというふうに思います。
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