151回-衆-予算委員会第三分科会-02号 2001/03/02

------------------------------------------------------------
高村国務大臣/法務大臣 高村 正彦君
------------------------------------------------------------

○水島分科員
 そして、今のは無国籍児のケースですけれども、もう一つ深刻な問題といたしまして無国籍状態児という存在がおります。親が不法滞在をしている場合に、そのことが露見するのを恐れて子供の出生を届けず、また外国人登録もしないというケースは実際には多くございまして、結果として多くの子供が無国籍状態になっております。
 無国籍児は国民健康保険への加入が認められておらず、医療費が高額で病院に行けません。心臓手術が必要なのに受けられずに死を待つのみという子供も存在しております。未熟児で生まれた場合、保育器の使用が十分に行われないということもあります。予防接種、特にポリオについては、集団接種の対象から外される自治体もあります。また、公立保育園への入所ができません。小学校への就学を認めない自治体もあると聞いております。小中高を通して私立への就学はほとんどできません。
 いずれにしても、無国籍児であれ無国籍状態児であれ、日本国内に居住していながら日本の法の保護下にはなく、子どもの権利条約には反した状態となっているのが現実でございます。子供の中には、学校にも通わされず、狭いアパートの一室で終日テレビを見て過ごしているというようなケースもあるわけです。
 親の不法行為と子供の人権とは全く別次元の問題です。こうした子供たちへの人権侵害を解決するために、日本政府として現実的で温かみがある取り組みが必要だと考えますが、法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

○高村国務大臣
 今委員がおっしゃることはよくわかるんですが、これは法務省が管轄する国籍の問題として処理すべき話なのかどうかということが一つあるのと、それから、届け出ないからそうなっているというのをどうするかというのを、私がどうやったらいいか、今直ちにお答えできないわけですが、ちょっと考えてみたいと思います。

○水島分科員
 この問題を親子をセットで考えている限り、恐らく子供の人権というものはずっと報われないのではないかと私は思っております。例えば、子供のことを届け出るとそれがそのまま親につながってしまうので届け出られない、結果として、親は望む望まないにかかわらず子供をそういう不健康な状態に置かざるを得ないということが日本の中で現実に起こっているわけでございまして、本当にそういったときの子供の人権をいかにして救済していくかということを、今法務大臣からも前向きの御答弁をいただきましたけれども、ぜひ法務大臣の見識で、この問題、本当に子供たちの人権をしっかりと救済できるような取り組みを考えていただきたいと思っております。
 これは私自身の考えでございますけれども、例えば、児童虐待に対する処置のように対処することはできないんでしょうか。親権などの問題がありますから強制することが目的ではありませんけれども、先ほど申し上げたように、福祉や医療の枠外に置かれていることを是正するための緊急避難的な措置として、一時的には親と別に保護することがあってもよいのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○高村国務大臣
 要するに、子供が何らかの理由で医療等を与えるそういう保護の対象外になっているということをどう救うかという問題で、人権の観点から法務省としても考えたいと思いますけれども、直接的に地方自治体なりあるいは厚生労働省なり、いろいろ政府全体で考えなきゃいけない問題かな、こういう感じはいたします。
 ただ、不法滞在者の子供が不法滞在者が届け出ないがゆえに不利益なことになっておる、子供と親は違うんだから子供については保護が与えられるべきだというのは、それは一つの考え方だと思いますし、私もある程度賛成したい部分もあるわけでありますが、一方で、基本的な問題は、不法滞在者をなくすということをしないと、やはり法務省が一番考えなきゃいけないことは、不法滞在者をどう減らしていくかという話なのかなと。そうはいってもたくさんいるわけですから、そういう中で親の因果が子に報いみたいな話はなくしていかなきゃいけないよという話は、それはもっともな部分がかなりの部分ある、こういうふうに思っております。

○水島分科員
 おっしゃるように、これは各省庁にまたがる問題であると思いますので、本当に政治家としての大臣に、ぜひその省庁の枠を超えて積極的な取り組みを御提案いただけますようにお願い申し上げます。
 そもそも不法滞在者がいるからこういう問題が起こるのであって、不法滞在者を減らさなければいけないということはもちろんそうなんですけれども、そういう原因をなくしていくことの結果というのはかなり先にあらわれてくるものであって、今現在人権侵害に苦しんでいる子供たちがたくさんいるというこの現実がございますので、その原因をなくしていくための措置とともに、今現在のこの人権問題をどうやって解決していくかという現実政策の両方をぜひしっかりとお取り組みをいただきたいと思っております。
 今法務大臣は、かなりの部分というふうに、全体的に御賛成はくださらない、極めて慎重な物言いをされておりましたけれども、私は、やはり親の因果が子に報いという考え方をなくしていかない限り、本当の意味で我々が人権を尊重できる社会というものは手にすることができないと思っております。
 ですから、かなりの部分とおっしゃらずに、これはもう親の問題と子供の人権というのは本当に全く別のものなんだ、親が幾ら不法行為をしているからといって、だからといって子供が法の保護下に置かれるべきではないなどということは、本当にくれぐれも日本に暮らすあらゆる大人に言っていただきたくないですし、ぜひ、そういう意見をリードしていく法務大臣としましても、本当に積極的に親の問題と子供の問題は別なんだというメッセージを日本国じゅうに発していただきますように、心よりお願いをいたします。


前のページに戻る