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2004年1月15日・最高裁判決を受けて
◎記者の目:不法滞在者の国保加入
◇行政は血の通う対応せよ−−生命にかかわる問題だ 毎日新聞 4月1日
◎<国民健康保険>在留資格なかった外国人の加入認める 横浜市 毎日新聞 2月17日
◎国保再加入を拒否される 山梨の仮放免の外国人 共同通信 1月28日(水)
◎外国人の国保加入 知事が前向き姿勢 最高裁判断を受けて見解示す(山梨日日新聞 2004年01月17日(土))
◎外国人の国保加入に前向き 山梨県、最高裁判断受け 共同通信 1月16日(金)
*毎日新聞 2004年1月15日 国民健康保険:不法滞在外国人も加入資格あり 最高裁
*読売新聞 2004年1月15日 不法残留し国保加入、条件次第で可能…最高裁が判断
*朝日新聞 2004年1月15日 不法滞在外国人にも国保資格「ある」 最高裁が初判断
*kyodo/20040115/Top court says overstaying foreigners can join nat'l insurance
記者の目:不法滞在者の国保加入=桐野耕一(編成総センター)
◇行政は血の通う対応せよ−−生命にかかわる問題だ
勤務先の会社が倒産したため在留資格を失い、国民健康保険を打ち切られた日本滞在歴16年になるパキスタン国籍の一家がいる。1月、最高裁は「不法滞在の外国人への国保加入を一律拒否するのは違法」とする判決を出した。一家はこれを受け地元自治体に改めて国保加入を求めたが、回答はまたもやノーだ。病気を患う子供もおり、途方に暮れる日々を送る。私は、判決が示すような事情がケース・バイ・ケースで認められる時は、直ちに国保に加入させるよう強く求めたい。
一家は首都圏の小さな町に住む。夫(40)は妻(39)と当時赤ちゃんだった長男(17)を連れ、88年からじゅうたんを修理する「技能」の資格で日本に在住。01年に勤めていた会社が倒産し、在留資格を失った。しかし、長男や日本生まれの二男(13)は日本語しか話せず、「両親の母国になじめない。帰るなら自殺する」とまで訴え、長男は強制退去におびえ、中学時代に一時不登校にまでなった。このため、夫婦は日本滞在を決心し、不法滞在者に在留資格を与える在留特別許可を求めている。現在、夫のアルバイトと、妻が営む小さな料理店の収入で生活する。あわせて月15万円程度だ。
しかし、夫は胆石、中学生の二男は小児ぜんそくを患い、03年4月に国保を打ち切られてからは診療に掛かるのを我慢する。結局、病状が悪化し、昨年2人が病院に掛かった際の治療費約30万円は、払えずに病院に立て替えてもらったままだ。また、長男も精神的に追い込まれ、腹痛と下痢を訴えるが、治療費を気にして通院しようとしない。妻は「治療費をどう返そうかと悩むが、子供らの健康もとても不安。心配せずに検査や治療を受けさせたい」と嘆く。
最高裁判決では、22年間日本に住み、居住する自治体に外国人登録を行い、在留特別許可を求めていたことなどを理由に、台湾籍の男性(51)に対し国保に加入する資格があったと認めた。その背景には、男性の長男が18歳で脳腫瘍(しゅよう)を患い、保険がないため治療費の負担で苦しんだ情状を酌んだ判断がうかがえる。在留資格については、長男の病気が発覚し在留特別許可を求めたその半年後、認められている。
厚生労働省国民健康保険課の企画法令係は「最高裁には、さまざまなことを考慮して結論を出せと指摘されたと考えている」と話し、近く新たな加入基準を各自治体に示す方針だ。
では、一家の住む自治体は、どのような理由で国保加入を断ったのだろうか。町は「県の指導に従っているだけ」と話し、同町を指導する立場にある県は「国から新たな指示や通達が来るまでは、従来の不法滞在者拒否の方針に従うだけだ」と突き放す。
私が不法滞在者の国保加入に関心を持ち始めたのは、かつて勤務していた山梨県で起きたある事件がきっかけだった。韮崎市で02年7月、韓国籍の女性(当時69歳)が同居する娘にベッドに縛られ、首が絞まり死亡する事件が起きた。女性は痴呆症がひどく徘徊(はいかい)癖があり、娘が外出する際、徘徊をやめさせようとシーツで手首や腰、首などを縛り付け7時間放置したのが原因だった。
女性は、日本人と結婚し飲食店を営む娘が韓国から呼び寄せていたが、その後、痴呆症が進み、当時不法滞在の状態。事件の2カ月前、娘は女性の国保や介護保険の加入を求め、市役所を訪れた。しかし、外国人登録はしていたが不法滞在のため入れず、娘は在留資格を得るため入国管理局にも足を運んでいた。事件後、入管は「徘徊がそれほどひどいなら、強制退去は無理だろう。ただ、在留特別許可が下りるとしても、早くて数カ月はかかる」と答えた。直ちに国保に加入させない限り“悲劇”は避け得なかったのだ。
もしも、今回の最高裁判決が事件前に出ていれば、女性は死なずにすんだかもしれない。そう思うと胸が締め付けられる。そして判決後もなお、医療が必要という状況を知りながら国保加入を拒み続ける自治体に憤りを感じる。これは、難民認定や在留特別許可申請の不許可などの際に見られる外国人の人権に対する配慮を欠く行政の一例に思えてならない。
取材に応じたパキスタン国籍の一家から「居住地が特定されると、狭い地域のため不法滞在と知られてしまい、子供がいじめに遭う」と居住地名を出さないようにくぎを刺された。実際に、不法滞在と分かり、子供がいじめに遭うなどのケースも起きている。これがかれらを取り巻く現実だ。
国保加入は医療をめぐる生命にかかわる問題である。国保を運営する自治体や厚労省は、温かみのある判断と対応をすべきだと思う。
毎日新聞 2004年4月1日 東京朝刊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040217-00003064-mai-soci
<国民健康保険>在留資格なかった外国人の加入認める 横浜市
在留資格がないことを理由に、国民健康保険への加入が認められなかった台湾籍の男性(51)に対し、横浜市は申請時にさかのぼって国保加入を認め、過去の医療費を支給する方針を決めた。男性の加入資格を事実上認めた最高裁判決(1月)を受けた措置で、18日に男性の代理人に通知する。(毎日新聞)
[2月17日13時13分更新]
読売新聞2004.02.18
外国人男性に国保不交付、横浜市が取り消し 最高裁判決受け治療費支給=神奈川
在留資格を持たない外国人男性(51)に、横浜市が国民健康保険証を交付しなかったのは違法とした一月の最高裁判決を受け、同市は、不交付とした当時の処分を取り消すことを決めた。市では、国保に加入していれば支払わずに済んだ治療費を支給する方針。
横浜市内に住んでいた男性は一九九八年五月、国保への加入を申請したが、市では「在留資格を持たず、国民健康保険法の『住所を有する者』とは認められない」として不交付を決定。男性はこれを不服として治療費など約千八百万円の賠償を市などに求めて提訴した。一、二審とも請求を棄却、最高裁も請求自体は退けたが、「男性は安定した生活を継続的に営んでおり、『住所を有する者』に該当する」として、市の加入拒否は違法とする判決を下した。
横浜市福祉局によると、最高裁判決が出されて以降、市に判決に関する問い合わせが数件寄せられているといい、在留資格の無いほかの外国人への対応については「国の動向を見定めながら、慎重に検討したい」としている。
■山梨日日新聞
http://www.sannichi.co.jp/DAILY/news.php?y=2004&m=01&d=29&s=1
2004年01月29日(木)
「仮放免外国人」の国保再加入申し入れを保留
最高裁判決出たのに… 支援団体が反発
在留資格を取り消されたものの「仮放免」と呼ばれる入管難民法上の措置によって中巨摩郡竜王町に住む外国人男性が二十八日、昨年四月に加入を打ち切られた国民健康保険への再加入を同町に申し入れた。最高裁が今月、「在留資格のない外国人でも一定の条件下で国保加入が可能」とする判決を出したことを受けての要請だったが、町側は「保留させてほしい」などとして具体的な回答は示さなかった。男性は十数年間、同町で家族と暮らしているが、勤務していた工場が倒産したことなどを理由にビザの更新を拒否されたことで国保加入も打ち切られた。在日外国人の支援団体は「国保加入は一刻を争う人権問題なのに、行政が積極的に対応しないのはおかしい」と疑問を投げ掛けている。
男性はこの日、町総合保健福祉センターを訪れ、家族の生活ぶりや、ビザが更新されなくなった事情などを説明。「子どもたちがけがをしないか、風邪をひかないかと心配でならない。司法の判断を受けて、すぐに国保へ再加入させてほしい」と要請した。
これに対し町担当者は「国や県から指示がないと町独自では動けない」「病院の領収書などを保存しておけば、後で国保に再加入できたときに払い戻しができる。だが再加入できるかどうかは分からない」などと話し、具体的な対応策などは示さなかった。
男性を支援する山梨外国人人権ネットワーク「オアシス」の山崎俊二事務局長は「手持ちの金がないから病院へ行けないのに『領収書をもらえ』はないのではないか。国保は各自治体が運営する自治事務で、町の独自の対応も可能なはずなのに町の消極的姿勢が理解できない。国保加入は義務教育などと同じで住民として医療を受けることは基本的人権だ」と疑問を投げ掛けている。
男性は一九八六年に技能ビザで来日。二○○○年以来、ビザの更新が認められていないが、昨年十二月に妻(39)と長男(17)、二男(13)とともに「仮放免」となった。長男は生まれてすぐに来日し、二男は日本生まれ。子どもたちはそれぞれ学校に通っている。
男性は胆石の持病があるが、国保に加入できないため治療ができない状態で、容体悪化の不安を抱えて生活。二男もぜんそくの持病があるという。男性は「町民としてまじめに暮らしてきた。仮放免で生活保護は受けられるというが、私は自分たちの力で生活したい。この気持ちを理解してほしい」と話している。
国保をめぐっては仮放免で日本に住む外国人が加入を拒否されて医療を受けられないケースが増え、社会問題化。最高裁は今月十五日、「国保法が在留資格のない外国人を一律に排除しているとは解釈できない」として、安定した生活の継続など、一定の条件下でこうした外国人も国保加入が可能とする判決を出した。これを受けて山本栄彦知事は「国際化の時代で、必要な手続きを取り、できるものはやっていく」と外国人の国保加入に前向きな考えを表明していた。国保事業は各自治体が運営し、都道府県は指導する立場にある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040128-00000290-kyodo-soci
国保再加入を拒否される 山梨の仮放免の外国人
在留資格を取り消されたものの、「仮放免」と呼ばれる入管難民法上の措置によって山梨県竜王町に住む外国人男性が28日、昨年4月に加入を打ち切られた国民健康保険への再加入を同町に申し入れたが、町は拒否を通告した。
竜王町は「国や県からの指示がないから」と拒否の理由を口頭で説明。在日外国人の支援団体は「地域住民として医療を受けることは基本的人権だ」として、理由を文書で示すよう町に求めた。
仮放免で日本に住む外国人は国保加入を拒否されて医療を受けられないケースが増え、社会問題化。最高裁は今月、こうした外国人も一定の条件下で国保加入可能との判断を示し、山本栄彦山梨県知事も「できるものはやっていく」と前向きな考えを表
明していた。
国保事業は各自治体が運営し、都道府県は指導する立場にある。(共同通信)
[1月28日21時15分更新]
■山梨日日新聞
http://www.sannichi.co.jp/DAILY/news.php?y=2004&m=01&d=17&s=2
2004年01月17日(土)
外国人の国保加入 知事が前向き姿勢
最高裁判断を受けて見解示す
在留資格がない外国人でも国民健康保険への加入が認められる場合があるとした最高裁の判断を受け、山本栄彦知事は十六日「できるものはやっていく」と、前向きに対応する考えを示した。
最高裁第一小法廷は十五日「国保法が在留資格のない外国人を一律に排除しているとは解釈できない」とし、安定した生活の継続など、一定の条件下で国保加入が可能とした。
山本知事は個人的な見解とした上で「各方面から申し入れがあることは承知している。国際化の時代で、必要な手続きを取り、できるものはやっていく」と述べた。
国保事業は各自治体が運営し、都道府県は指導する立場にある。
山梨では「仮放免」と呼ばれる入管難民法上の措置で定住するパキスタン人が昨年四月、中巨摩郡竜王町からビザがないことを理由に国保加入を打ち切られた。また滞在期間が一年未満の外国人らの国保加入が拒否されるケースもあった。
甲府市の在日外国人支援団体「オアシス」の山崎俊二代表は「地域住民として医療を受けることは基本的人権。外国人を住民として認めていく姿勢は評価したい」と話している。
県国保援護課は「最高裁の判決により、在留資格を国保加入の根拠としていた厚生労働省の方針が見直されれば、方針に沿って直ちに市町村に指導する」としている。
共同通信
2004年01月16日(金)
外国人の国保加入に前向き 山梨県、最高裁判断受け
在留資格がない外国人でも国民健康保険への加入が認められる場合があるとした最高裁の判断を受け、山梨県の山本栄彦知事は16日「できるものはやっていく」と、前向きに対応する考えを示した。
最高裁第一小法廷は15日「国保法が在留資格のない外国人を一律に排除しているとは解釈できない」とし、安定した生活の継続など、一定の条件下で国保加入が可能とした。
山本知事は個人的な見解とした上で「各方面から申し入れがあることは承知している。国際化の時代で、必要な手続きを取り、できるものはやっていく」と述べた。
国保事業は各自治体が運営し、都道府県は指導する立場にある。
山梨県では「仮放免」と呼ばれる入管難民法上の措置で定住する外国人や、滞在期間が1年未満の外国人らの国保加入が拒否されるケースが相次ぎ、社会問題化していた。
毎日新聞ニュース 2004 年 1 月 15 日
http://news.msn.co.jp/newsarticle.armx?id=664528
[国民健康保険] 不法滞在外国人も加入資格あり 最高裁
在留資格がないことを理由に国民健康保険へ加入できなかったために高額な医療費を支払わされたとして、台湾籍の李学善さん(51)=川崎市幸区=が国と横浜市に損害賠償を求めていた訴訟で、最高裁第1小法廷(島田仁郎裁判長)は15日、「在留資格がない外国人を一律に排除するのは許されない」との初判断を示し、李さんの加入を認めなかった処分は違法だったと認めた。ただし国や市の担当者に過失はなかったとして賠償請求は認めず、李さんの敗訴が確定した。
1、2審とも李さんが敗訴したが、加入資格については1審が「あった」、2審が「なかった」と判断が分かれていた。
同小法廷は「国民健康保険法に不法滞在の外国人を排除する規定はなく、当該市町村で安定した生活を継続的に営み、将来も維持する可能性が高い場合は加入が認められる」と指摘し、李さんのケースは22年間日本に住んでいたなどの事情があるとして「加入拒否は違法だった」と判断した。
しかし、一方で「対象を適法な居住関係者に限定することに合理的な理由はある」と指摘した。さらに他の裁判で加入適用を否定する判決も出ていたため、「在留1年以上」などの要件を定めた厚生省(当時)通知に従って李さんの加入を認めなかったことに「国家賠償法上の責任は認められない」と結論付けた。
李さんは98年の提訴後に特別在留許可を得て、現在は国保に加入している。【清水健二】
李さんの弁護団の話 裁判所が国保適用を認めない判決を出していたことで、今回は賠償責任が否定された。しかし、最高裁が違法と認めた以上、今後は同様のケースでは賠償責任も認められる。その意味で大きな一歩だ。
読売新聞(YOMIURI ONLINE)
http://news.msn.co.jp/newsarticle.armx?id=664528
不法残留し国保加入、条件次第で可能…最高裁が判断
在留資格がないことを理由に国民健康保険への加入を拒否されたのは違法として、台湾華僑の子として韓国で生まれ、日本で生活を営む李学善さん(51)(川崎市)が、以前住んでいた横浜市と国に対し、国保に加入していれば負担せずに済んだ長男の入院費など約1800万円の賠償を求めた訴訟の上告審判決が15日、最高裁第1小法廷であった。
島田仁郎裁判長は、請求自体は退けたが、在留資格のない外国人でも国保加入は可能とする初判断を示した。
国民健康保険法では加入資格を「当該市町村に住所を有する者」としか規定しておら
ず、1、2審とも請求を棄却したが、李さんに加入資格があるかどうかの判断は分かれていた。
第1小法廷は、この規定について「在留資格のない者を一律に除外する趣旨ではない」と指摘。加入できる条件として、〈1〉本人が在留特別許可を求めている〈2〉現在住んでいる市町村での安定した生活を将来も維持できる可能性が高いと認められる――などを挙げた。
その上で、李さんの場合、加入申請時点で約13年間も横浜市に定住していたことなどから「加入拒否は違法」と判断。しかし、「当時は加入拒否を適法とした判決もあり、市や国に過失はない」と結論づけた。裁判官5人のうち、2人は「在留資格のない外国人は国保の被保険者にはなじまない」として、加入できないとする意見を述べた。
(2004/1/15/13:45 読売新聞)
在留資格なくても加入可能 外国人の国保問題で初判断
在留資格がないことを理由に国民健康保険に加入させなかったのは違法として、韓国出身の李学善さん(51)が、国と以前住んでいた横浜市に賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷は15日、請求を退けた1、2審判決を支持、李さんの上告を棄却した。
訴訟では、国保加入の条件である「住所を有するもの」の解釈が外国人のケースで争われた。
島田仁郎裁判長は「国民健康保険法が在留資格のない外国人を一律に除外しているとは解釈できない」と指摘し「市町村の区域内に居住し外国人登録をした上で在留特別許可を求めている」ことを前提に、安定した生活を継続的に営み将来も維持し続ける可能性が高ければ「住所を有するもの」に該当するとの初判断を示した。(共同通信)
[1月15日11時58分更新]
朝日新聞 2004年01月15日(木)
不法滞在外国人にも国保資格「ある」 最高裁が初判断
在留資格のない外国人に国民健康保険の加入資格が認められるかどうかが争われた訴訟で、最高裁第一小法廷(島田仁郎裁判長)は15日、「加入資格が認められる場合がある」とする初めての判断を示した。厚生労働省(旧厚生省)は92年3月、「1年以上の在留資格がある場合は国保の被保険者」とする見解を示している。同小法廷は、「一般的には適法な在留資格がなければならないが、個別の事情や生活状況に照らして判断すべきだ」としており、自治体の国保実務に一定の影響を与えそうだ。
ただ、こうした規定は国民健康保険法にも、当時男性が在住していた横浜市の条例にもなく、市が国保加入を認めなかった処分に過失はないとして、男性の損害賠償請求は退けた。
この訴訟では、韓国生まれで台湾籍の川崎市の飲食店経営の男性(51)が、在留資格がないことを理由に国民健康保険への加入が認められず、子供の脳腫瘍(しゅよう)の手術で高額の医療費を負担させられたとして、横浜市と国に約1800万円の損害賠償を求めていた。男性は84年に短期在留資格で入国し、そのまま不法残留。提訴後の98年、在留特別許可を得た。
同小法廷は、男性が在外華僑として出生し、台湾でも国籍が確認されなかった境遇や、日本で長期間、安定した生活を営んでいた事情などから「国保加入を認めなかった処分は違法」とした。
ただ、「条例で在留資格のない外国人を適用除外者とすることは可能」とも指摘。5裁判官のうち、横尾和子、泉徳治の両氏は「不法滞在者は地域保険である国保加入者の被保険者としてなじまず、市の処分は違法ではなかった」との意見を付し、判断が分かれた。
一、二審も、ともに男性の賠償請求は退けたが、被保険者の資格について判断が分かれていた。
Kyodo
Thursday January 15, 1:48 PM
Top court says overstaying foreigners can join nat'l insurance
The Supreme Court ruled Thursday that it was illegal for the state and local authorities to bar all foreigners without valid residency status from the national health insurance program.
The court ruled it was illegal to deny Li Hsueh-shan, 51, who has lived in Japan since 1971, the right to join the insurance scheme. Li, a South Korean-born overseas Chinese, had appealed to the court after his compensation demand against the state and the Yokohama city government was rejected by lower courts.
"It cannot be interpreted that the law on national health insurance excludes all foreigners without residency status," Presiding Judge Niro Shimada said. Under the law, people must have an address in Japan to be eligible to join the insurance scheme.
Justice Shimada said that if such foreigners are registered with the authorities of the areas where they reside, are in the process of applying for special permission for residency, and are likely to be able to sustain a stable living in Japan, they qualify as persons with an address and thus should be eligible to join the insurance plan.
The top court, however, upheld lower court rulings and rejected Li's demand for compensation, saying it found no fault on the part of city and state officials who dealt with the case.
Two of the top court panel of five judges dissented with the ruling, saying foreigners without proper residency status should not be covered by the national health insurance.
According to the ruling, Li, whose ancestors originated from Taiwan, came to Japan in 1971. But the visas for his family of four had expired by 1984. He registered with the Yokohama city office as a foreigner in March 1997 and applied to join the national health insurance a year later.
The city rejected his application, acting on instructions from the health ministry regarding eligibility requirements. As a result, the family was denied assistance with medical fees when Li's son underwent treatment for a brain tumor.