照会先
大臣官房政策課
課長補佐 北村彰
(内線2248)
----------------
外国人に係る医療に関する懇談会報告書の概要
1 我が国の外国人の受入れの考え方
○ 外国人労働者の受入れについては、政府、経済団体、労働団体において、専門的技術、技能、知識等を有する外国人は可能な限り受け入れる一方、いわゆる単純労働者の受入れは様々な問題があり十分慎重に対応する、との基本的考え方が示されているが、それは現時点においても妥当である。
○ 不法滞在問題については、入国管理政策における厳正な方針・措置により、水際での入国の阻止、あるいは取締りの強化による不法滞在者の定着化の防止を一層徹底することが必要である。
2 外国人に係る医療の現状と対応の方向
(1)基本的な考え方
○ 我が国の社会保障制度は基本的に内外人平等の原則に立って適用されることとなっているが、外国人が不都合を感じることなく医療を受けられるよう、十分な情報提供や利用しやすさに配慮した運用を行うことが必要である。
○ 不法滞在外国人への対応については、入国管理政策との整合性に留意する必要があり、不法滞在を前提とし、これを容認するような形で、新たに制度的な対応を行なうことは論理的な矛盾を拡大するだけでなく不法滞在を助長するおそれもあり不適当である。
○ 一方、現実問題として約30万人という不法滞在外国人が存在し、医療費の未払い問題も生じているが、不法就労による収入が母国への送金等に使われているなどの実態もあり、このような実態も考慮する必要がある。
○ また、不法滞在外国人の雇用主の責任を追及していくことも必要である。
○ 以上を総合的に勘案すれば、国、地方公共団体、雇用主、医療機関など関係する多くの者がそれぞれの役割に応じて関わりの程度を広げることにより、問題点をできるだけ縮小していくことが現実的な対応である。
○その際、税や保険料を負担することなく医療サービスを享受するという問題や医療目的の入国を生じないようにすることが必要である。
(2)外国人にも利用しやすい保険医療制度
○ 言葉の問題、知識や情報の不足など、外国人が医療を受けるに当たっての様々な困難や摩擦を取り除くため、地域の実情に応じて、各種施策の推進や医療機関の取組みが必要である。
(3)医療保険制度
○ 本来、医療保険制度が適用されるべき外国人が適用から漏れている事例があるほか、自ら加入しようとしない者もみられるが、医療保険制度についての十分な情報提供を図るなどにより、加入を促進することが必要である。
○ 健康保険制度は、雇用関係に着目した職域における保険制度であり、常時雇用されている外国人については、事業主による届出によって、健康保険制度の適用を行う取扱いとしていくことが適当である。
○ 国民健康保険制度については、適法に滞在している外国人が在留期間の更新により、結果的に1年以上我が国に滞在する場合には国民健康保険制度への加入を検討する。また、日本人と結婚したことなどを理由として退去強制手続の過程において我が国への在留を希望している者であって、我が国に一定期間居所を有することについて合理的な理由がある場合などについては国民健康保険制度の適用が考えられるかどうか、制度上の検討が必要である。
(4)その他の諸制度における対応
○ 生活保護制度については、個人の自助努力を前提とする制度の趣旨、医療保険制度や民間医療保険への加入意欲の減退等を総合的に勘案すれば、不法滞在外国人や短期滞在者等について生活保護制度を準用することは不適当である。
○ 社会福祉法人等が行う無料低額診療事業については、外国人に対しても無料又は低額な料金で診療や健康相談等が行われ、その際に外国人向けの手引きの活用等の語学上の対応が行われているところであるが、今後ともこれらの対応の幅を積極的に拡大することを期待する。
○ 居所不明等の事例であって身元引受人がいないような場合には、地方公共団体において、行旅病人及行旅死亡人取扱法を活用することも一つの方法である。
○ 経済的理由等により入院助産を受けることができない場合に、助産施設において対応が可能な旨を福祉事務所等に周知徹底するなど、円滑な受入れができる工夫を行うことが必要である。
(5)関係者の協力
○ 在日外国公館に対し、外国人の保護や帰国に関してその役割が十分果たされるよう要請していくことが必要である。
○ 身元引受けや帰国手続等に関し、雇用主等の責任に応じた協力を求めていくべきである。
○ 民間ボランティア団体は外国人に対し多種多様な援助活動を行っており、今後ともその特性を生かしつつ、一定の役割を担っていくことを期待する。
3 不法滞在者の医療費未払問題
○ 医療機関の未収金は、基本的には債務不履行の問題であり、医療機関が可能な限り債権回収努力を行うことが基本である。したがって、医療機関の未収金について国民の税金をもって単純に肩代りすることについては、必ずしも国民の理解が得られるものとは思われない。
○ 一方、医療機関は、医療費の支払い能力がないからといって診療を拒否することはできず、とりわけ生命に直結するような緊急かつ重篤な疾病・負傷の場合には、多額の費用を要する場合も多いことから、医療費を支払えない事例が生ずるおそれがある。このため、救急医療制度の円滑な運営を確保する観点から、国としても何らかの対応措置を検討することが必要となる。
○ この場合には、地域の実情に配慮して、地方の取組みを国が支援すると言う考え方を基本とするとともに、その範囲は緊急に必要とされる医療に止め、不法滞在であることが判明した場合には、病状安定後は入国管理当局の適切な措置に委ねることのできる仕組みとしていく等の観点を踏まえ検討を行うことが必要である。
4 その他
○ 各種の施策や関係者の協力によって総合的な対応を推進するため、関係各方面に対し協力を要請する。
前のページに戻る