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新聞切り抜き(リタイプ) 養育医療のケース


11月23日 京都新聞
【見出し】
韓国人女性に医療給付制度適用 京都滞在中に未熟児出産

【本文】
 今年10月、研修旅行で来日中に京都市内の病院で未熟児を出産した韓国人女性教諭、チョ・ヨンリムさん(34)に対し、市は22日、母子保健法に基づく未熟児の医療費を給付することを決めた。国内ではほとんど前例がないケースだったが、教諭側の要望を受けて市が適用を決めた。

 母子保健法の未熟児養育給付制度は、2000グラム以下で生まれた未熟児の入院医療費について、所得に応じた自己負担分を除き、国と市町村が折半する。京都市は独自に自己負担分も給付している。

 市と関係者によると、チョさんは財団法人日韓文化交流基金の招きで来日中の10月2日、転倒事故で陣痛が始まり、予定よりも早く市内の病院で未熟児の男児を生んだ。代理人が保健所に未熟児養育給付を申請したが、市は当初、前例がないことや、日本の医療保険に加入していないことを理由に難色を示していた。

 外国籍住民の緊急医療を支援している「ブレンダ会」の中村尚司龍谷大教授らが「母子保健法には国籍条項はなく、給付すべきだ」として市に要望。京都市議でつくる日韓親善議員連盟も22日、桝本頼兼市長に給付制度の適用を要請した。

 市は「母親が日韓の交流で来日していたこともあり、子どもの健やかな成長を願い、特例で給付を決めた」としている。医療費総額は約190万円で、市の負担分はまだ決まっていないが、チョさんの負担はなくなった。チョさんはこの日、退院した男児と一緒に韓国へ帰国した。

11月23日 読売新聞
【見出し】
韓国人女性の未熟児養育医療/京都市、特例で支給

【本文】
 京都市は二十二日、韓国人女性が研修旅行中に市内で産んだ未熟児に対し、約二百 万円の医療費を全額支給することを決めた。当初、市は日本の医療保険に未加入であ ることを理由に支給に難色を示していたが、女性や韓国総領事館などの要望を受け入 れ、特例措置を取った。

   日本の未熟児医療では、母子保健法で「自治体が未熟児養育医療にかかる費用を負 担できる」とされている。市は医療保険から支給される額を除く自己負担分を全額補 助しているが、医療保険未加入の外国人の場合は想定していなかった。

 女性は中学教諭の榮林(チョヨンリン)さん(34)。「日韓文化交流基金」の招 きで九月に来日し、東京などの中学校を視察。同月三十日、陣痛が始まり、十月二 日、市内の病院で予定日より2か月早く約千六百グラムの男児を出産。男児は健康に 育ち、今月二十二日に退院した。

 分べん費用は韓国で加入した旅行保険でまかなわれたが、未熟児の医療費は旅行保 険の適用外で、さんが市に支給を求めていた。市は「未熟児医療制度の趣旨を考慮 した」と説明している。

11月23日 朝日新聞
【見出し】
来日韓国人の未熟児出産/医療費、一転し負担へ/京都市

【本文】
 韓国人女性教師(34)が研修で来日中に未熟児の男児を出産し、京都市に母子保健法 に基づく養育医療費の負担を求めていた問題で、同市は22日、女性に制度の適用する 方針を決めた。市は女性が日本で生活していないことを理由に負担に難色を示してい たが、「特例」として認めるという。

 この日、桝本頼兼市長が、制度適用を求める市議らに「適用できるように指示す る」と述べた。

 女性は、足をすべらせたのがきっかけで陣痛が始まり、先月市内で未熟児を出産。 男児は保育器の中で順調に育ち、22日に退院して迎えに来た家族と帰国した。

 同法に国籍条項はなく、政府は不法就労者にも医療費を給付できるとの見解だが、 自治体が制度の適用を決めなければ、国の負担も認められない。男児の入院費用は約 190万円。全額を国と市が負担する。

 市健康増進課は「日韓友好目的の来日であり、子どもの健やかな成長を願う観点か らも特例として認めたい」としている。決定を聞いた女性は、「うれしい。生まれて きた命を平等に扱った市に感謝している。子どもを日韓友好に役立つ人間に育てた い」と話した。

11月23日 毎日新聞
【見出し】
京都市が入院費負担/韓国人教諭の未熟児出産

【本文】
 外務省所管の財団法人「日韓文化交流基金」(熊谷直博理事長)の招きで来日して いた韓国人教諭、榮林(チョヨンリン)さん(34)が出産した未熟児の入院医療費 約200万円の負担をめぐる問題で、京都市は22日、母子保健法を適用して国と市で負 担することを決めた。市議43人で構成する「日韓親善議員連盟」(会長・椋田知雄議 員)の要請を受けた桝本頼兼市長が「さんは日韓友好の大きな懸け橋として活動し ていると聞いている。法を適用し関係者に安心していただきたい」と適用を表明し た。

 さんは先月2日、予定より2カ月早く同市内で長男を出産。長男は市内の病院で 養育され、22日に退院した。さんは「感謝している。真の友好を肌で感じた」と笑 顔を見せ、夫の金柄煥(キムピョンファン)さん(36)も「一生忘れられない貴重な 体験をした」と感謝の意を表した。同日、一家そろって帰国した。

11月23日 産経新聞
【見出し】
来日韓国人の未熟児医療費 京都市、負担に前向き

【本文】
 外務省の外郭団体「財団法人日韓文化交流基金」の招きで 来日していた韓国人の中学教員、チョウ・ヨンリムさん(34)が、 京都市内で研修中に突然、男児を出産、この男児の入院医療費を めぐり、京都市の桝本頼兼市長は二十二日、市が負担する方向で 検討する考えを示した。当初、市は男児が日本人でないことなどから、 負担に難色を示していたが、日韓の友好関係や国際交流を深める 観点から、前向きな姿勢を打ち出した。

 チョウさんは妊娠八カ月だったが、訪日研修団の一員として十日間 の日程で九月二十四日から来日していた。

 研修で京都市内にいた三十日、バスから降りる際に誤って転んだ ことがきっかけで陣痛が始まり、十月二日、京都第一赤十字病院 (東山区)で未熟児(男児)を出産。本人は十月七日に退院して 帰国、男児は病院の保育器の中で無事育ち、二十二日に退院した。 チョウさんの入院費は韓国の旅行会社から支払われたが、市は、 男児の医療費(入院費など)約百五十万円については、男児が 日本人でないことに加え「発生を全く想定していなかった事柄」 (市健康福祉局健康増進課)などの理由で負担に難色を示していた。

 この問題について、京都市議会日韓親善議員連盟の椋田知雄会長が 二十二日、桝本市長を訪問。日韓の友好親善と国際文化都市を 掲げる京都市として男児の入院費などを「未熟児養育費医療給付 制度」の適用でまかなうことを求める要請書を手渡した。 これに対し、桝本市長は「難しい判断を求められる事柄だが、 早速にも適用できるよう審議したい」と述べ、適用に向け前向きに 検討する考えを示した。

 「未熟児養育医療給付制度」は、未熟児が入院した際に必要な 医療費のうち、自己負担分を除く金額を国と自治体が半分ずつ 負担する内容で国籍条項は定めていない。

 京都市の場合は自己負担分も補助している。



11月22日 朝日新聞
【見出し】
未熟児出産の韓国人女性会見/「市は前向き検討を」/医療費負担

【本文】
 研修で来日中に未熟児の男児を出産した韓国人女性教師(34)に対し、京都市が母 子保険法に基づく養育医療の負担に難色を示している問題で、女性が21日、同市役 所で会見し、「市は制度の適用を積極的に検討してほしい」と訴えた。同市は今のと ころ、「日本で生活していない女性に制度を適用することは難しいが、慎重に検討し たい」としている。

 女性は22日に退院する男児を迎えるため夫(36)と長女(5)とともに20日に来日 した。

 女性は「外国人として旅行中に子どもを生んだが、京都で生まれた命に変わりはな い。市は制度の精神を踏まえ、前向きに検討してほしい」と話した。また「身内がい ないところで子どもを生んで苦労したが、多くの人たちが励ましてくれた。日本のみ なさんの温かい心遣いを韓国で伝えたい」と述べた。



11月20日 朝日新聞
【見出し】
来日韓国人出産の未熟児/京都市、医療負担に難色/観光ビザ入国理由に

【リード】
 研修で来日中、京都市で未熟児を出産した韓国人教師(34)が、母子保健法に基づく未熟児の入院医療費の負担を同市に申請したところ、同市が難色を示している。同法では、未熟児が入院した場合、自治体が養育医療にかかる費用を支給することができるとされている。国籍条項はないが、市は「日本で生活していることが前提。観光ビザで入国中の女性に適用するのは難しい」としている。

【本文】
 女性は9月24日、10日間の研修のため来日。妊娠8カ月だった。同30日、京都市内で足をすべらせたことをきっかけに陣痛が始まり、10月2日に市内の病院で約1650グラムの男児を出産した。同7日に退院して帰国したが、男児は今も病院の保育器で育っており、21日に退院する予定という。

 女性の入院費は韓国の旅行保険会社から支払われた。男児の医療費約150万円については、未熟児養育医療の申請をしたが、市は今のところ「旅行者は資格なので給付は困難」との立場を崩していない。  「養育医療」は、入院が必要な未熟児の医療費で、収入に応じた自己負担分を除く額を国と自治体が半分ずつ負担する制度。京都市は自己負担分についても補助している。国は、日本国籍の有無や在留資格に関わらず医療を給付できるという見解をとっている。

 厚生労働省は「法律上、決定権は自治体にある」とし市に対応を委ねている。

 外国人問題に詳しい龍谷大の田中宏教授は「国籍条項のない母子保健法の適用を、一時的な滞在かそうでないか線引きするのはおかしい。同法の精神に基づいて生れた命は等しく保障されるべきだ」と話している。



11月19日 毎日新聞
【見出し】
法のすき間 困惑の母/韓国人教諭 来日中に未熟児出産/入院費200万円 自己負担?/ 京都市 「保険未加入」で難色

【本文】
 外務省所管の財団法人「日韓文化交流基金」(熊谷直博理事長)の招きで来日した 韓国人女性教諭(34)が先月、予定日より2カ月早く京都市内で男児を出産した。男 児は未熟児で、保育器で養育されており、約200万円の入院医療費が必要。未熟児の 入院の場合、「自治体が養育医療にかかる費用を支給することが出来る」と定めた母 子保健法の規定があり、同基金や韓国総領事館は、京都市に適用を求めている。一 方、市は国民健康保険など日本の保険に未加入であることを理由に「難しい」と主 張、教諭に請求する構えで、費用負担を巡り真っ向から対立している。

 関係者によると、女性教諭は9月24日、学校視察などの研修のため10日間の予定で 来日。東京や神奈川、新潟の中学校を訪れ、授業見学や日本の教諭らと交流していた が、同月30日午後、京都市内でバスから降りる際、足を滑らせたのが原因で陣痛が始 まり、10月2日、同市内の病院で男児を出産した。

 誕生時、男児は2000グラムに満たなかったが、現在、同じ病院の保育器で順調に 育っている。分べん費用については韓国で加入した旅行保険でまかなわれたが、その 後の医療費負担分については日本での指置が不可欠の状態。未熟児の入院医療費用 は、同法の規定により収入に応じて一定額の支給の申請が出来る。女性教諭は自主的 に京都市に収入証明などを提出し、自己負担分は支払う意思も示している。

 厚生労働省は「大変まれなケースだが、養育医療制度の適用は地方自治体の判断に 委ねられる」としている。これに対し京都市は「母子保健法は日本の保険未加入者を 想定しておらず、現行法の枠内で対応するのは難しい」と判断。「法に準じるケース なのか、さらに検討する」と話している。
    【平野圭柘】

柔軟対応を
 田中宏・龍谷大教授(日本アジア関係史)の話


 母子保健法は、入管法に定める在留資格に関係なく給付を行い得るという政府の見 解がある。国籍によって排除してはならず、京都市が女性教諭に全額負担させるのは 理屈が通らない。柔軟に対応すべきだ。