2002年6月24日
京都府知事
京都市伏見区深草塚本町67 龍谷大学経済学部中村研究室気付 ブレンダ会 代表 中村尚司 TEL/FAX: 075-645-8429 |
京都で暮らす外国人の緊急医療について(要請)
ブレンダ会は1991年、くも膜下出血で倒れたフィリピン人、ブレンダ・ガルシアさんの支援を行うために設立された団体です。民間からの募金によってブレンダさんの支援を行い、ブレンダさんの帰国後も外国籍住民の緊急医療問題への支援活動を行ってきました。
ブレンダ会ではここ数カ月間に3件の支援要請を受けました。いずれも救急患者であり、高額の医療費が負担できず、かつ現状の健康保険制度で対処できないケースです。
その一例として、2001年12月15日の夜、JR西大路駅のホームで通過電車にはねられた金健さん(32歳)の例を報告します。
金さんは京都市南区の豆腐製造会社に勤めていました。そして会社主催の忘年会の帰りに事故に遭いました。金さんは朝鮮族の中国人で、吉林省の医学院薬学科を卒業、1999年に来日し、日本で薬学の勉強を試みましたが希望は叶わず、事故当時ビザの期限は切れていました。
危篤状態で京都九条病院へ搬送された金さんは、病院の医療スタッフの適切な処置により一命を取り留めました。しかし代わりに高額な医療費の問題が残りました。家族も中国から駆けつけましたが、両国の所得水準の違いが大きく、約170万円という高額な医療費に加えて家族の滞在費、帰国の旅費など、いずれも金さんたちにとっては生半可な額ではなく、負担することはできません。
ブレンダ会では病院や会社と話し合いましたが、金さんの働いていた豆腐工場は健康保険等の社会保険に加入しておらず、また金さん自身に在留資格がないため国民健康保険や生活保護の適用も受けられません。継続して治療が必要であるため、とりあえず金さんは帰国しましたが、現在も医療費のほとんどは未払い状態となっています。
私立病院である京都九条病院は金さんの医療費が徴収できなければ、大きな経営上の問題を抱えることになります。また適切な医療を提供しようとする多くの病院関係者にとっては、緊急入院患者を前に対応に苦慮しています。このような事態が今後重なることは、患者、医療関係者のみならず、国際化を掲げる京都府にとっても、私たち府民にとっても決して好ましい状態ではありません。
このように、外国籍住民で緊急医療が必要であるにもかかわらず、医療費があまりにも高額で負担できないという例が多々あります。東京都では、1992年から行旅病人法(明治32年)の予算措置を復活させ、都が医療費を負担しています。神奈川県では1993年に、「救急医療機関外国籍県民対策費補助事業」を始めました。その他、兵庫県では1994年から、救急医療機関(歯科も含む)が安心して外国人に救命救急処置が行えるよう、外国人の未払い医療費(100万円を限度に)を県と市町が補助しています。
また救命救急センターを設置している国立京都病院、京都第一赤十字病院、京都第二赤十字病院では、このような緊急医療に必要な費用について国と自治体からの補助を受けられる制度が設けられています。しかし、この制度は申請にかかる手続きが煩雑で、現場の実情にそぐわないものです。
外国籍住民への緊急医療は、生命に関わるきわめて重要な人権問題として認識すべきであり、人道的見地からも体系的な取り組みの検討が必要です。
京都府が目指す地域づくりの目標として「京都府国際化プラン」(1995年)があります。そこには、「保健・医療、労働、住宅、教育などについて、外国籍府民が利用しやすく、生活しやすい環境を目指し整備に努める」とあります。このプランに記されている通り、彼らが安心して医療を受けられるような恒久的な制度の検討・整備を進めることは、このプランの具体化に他ならず、京都で外国人の緊急医療に関心を持つ団体が協議し、下記のような要望を取りまとめました。早急に実現されるよう強く求めます。
1. 「外国人未払い医療費対策事業」を早急に実施すること。
2. 外国人の緊急医療や医療通訳などに関する実態調査を実施すること。
3. 京都府のもとに、医師会、病院などの医療機関、外国人支援の市民団体、国際交流団体などによる「外国人医療問題研究会(仮称)」を組織し、今後の体系的な取り組みに資すること。
4. 「京都府国際化プラン」制定後、今日までに外国籍府民の医療について、いかなる整備が行われたか、またそれに関連して国にどのような要望を行ったか、明らかにすること。
賛同団体
京都市上京区室町通出水上る
京都YWCA/APT
代表 神門佐千子
京都市中京区烏丸通錦西入る占出山町308
山忠ビル2F
多文化共生センター・きょうと
理事長 田村太郎
京都市左京区田中門前町103-5
(財)ルイ・パストゥール医学研究センター
理事長 岸田綱太郎
添付資料
2. 救急医療機関外国籍県民対策費補助事業について (神奈川県)
3. 埼玉県外国人未払医療費対策事業補助金交付要綱 (埼玉県)
(添付資料のリンク先は、提出した資料と同じではありません。)