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小宮山洋子議員(民主党)が追及
参議院予算委員会(2004年3月15日)
福島瑞穂議員(社民党)が追及
参議院法務委員会(2004年3月16日)
千葉景子議員(民主党)が追及
参議院法務委員会(2004年3月16日)で、千葉景子議員(民主党)が追及
010/012] 159 - 参 - 法務委員会 - 2号
平成16年03月16日
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千葉景子
政府参考人(法務省入国管理局長)増田 暢也君
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[092]千葉景子
○千葉景子君
民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
同僚の角田委員に引き続きまして、何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。
まず最初に、私もちょっと改めてびっくりをいたしたんですけれども、法務省もそれぞれ情報の提供にいろいろと努められておりまして、入管、入国管理局もいろいろホームページを持っておられます。ちょっと出しますと、こんなきれいなカラー刷りで出てくるんですけれども、実はこのホームページ上に、本年二月十六日にメールによる不法滞在者の情報受付システムというのが開設をされております。
大臣の所信等でもお伺いをいたしましたけれども、従来から入管でも、不法滞在者についての様々な情報を市民から電話とかあるいは手紙などで募ってきたという経過はございます。そしてそういう中で、多分こういうことだと思うんですけれども、昨年十二月十八日、犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これは犯罪対策閣僚会議で決定されたものですが、そういうものが発表されまして、犯罪の温床となる不法滞在の外国人約二十五万人を今後五年間で半減させようと、こういうことが方針として打ち出されました。こういうことが背景になって、この情報を取得をする、電話とか手紙などではなくしてメールによっても情報を集めようと、こういうことになったのではないかというふうに私も推測をいたします。
このメールによる情報受付システムというのは、寄せられた情報が、それぞれ関係する、働いておれば働き先、あるいは居住地を管轄する地方入国管理局とかその支局に送られ、届けられて、その情報が活用されると、こういうような仕組みになっているようですが、このホームページ上での情報取得のシステムというのはおおよそこういうことでよろしいんでしょうか。
[093]増田暢也
○政府参考人(増田暢也君)
ただいまお尋ねをいただきましたとおり、この情報提供受付は、入管法の第六十二条第一項で、何人も第二十四条各号、これは退去強制事由ですが、退去強制事由に該当すると思料する外国人を知ったときにはその旨を通報することができるという規定がございまして、従来も入管局では、国民の皆様方から電話とかあるいは手紙などでこの退去強制事由、例えば不法入国であるとか不法残留の疑いがあるような外国人の情報をいただいてまいりました。
その過程で、国民の方々から、二十四時間いつでも発信できる電子メールでも情報提供したいと、こういう声がございまして、昨今のインターネットを利用した電子メール、これが広く普及している事情にもかんがみまして、電子メールも利用して情報提供をしていただこうと、こういうことで、今般、入管局のホームページに情報受付の項目を設けたものでございます。
そして、お寄せいただいた情報につきましては、先ほど委員から御指摘がございましたとおり、それぞれその情報を所管する地方入管においてこれを受けた後、内容を精査、分析して、優先度なども勘案しながら不法滞在などの外国人の摘発の端緒として活用していくということを考えているものでございます。
[094]千葉景子
○千葉景子君
これまでも先ほど言ったように電話とかあるいは手紙などでの情報が寄せられていたということですけれども、聞く範囲で、私が知り得た範囲ではございますけれども、そういう中でも、実際に寄せられる情報というのは、必ずしも根拠のないものも含まれているようでもございますし、あるいはいたずらのようなもの、あるいは勘違いであったというようなものもあるということも言われております。
そういう状況の中で今回のまたメールということになるんですけれども、これを見ますと、別に自分の出所、出所というか名前を明かしたりそういうことをしなくても、匿名を希望すればそれでも構わないということになってもおります。
こうなるといろんなケースが出てくるんだろうというふうに思いますが、これ、どうなんでしょうか、報道などによりますと、開設後五日間で二百件の情報が寄せられたと、開設が二月十六日ですから。それから更に日数がたっておりますけれども、どうなんでしょうか、これまでどのくらいの情報が寄せられていて、そして具体的には、内容としてはどういうものが寄せられてきているのでしょうか、御説明いただきたいと思います。
[095]増田暢也
○政府参考人(増田暢也君)
先週の三月十一日まで、二月十六日からの間ですけれども、寄せられた情報は約七百八十件に上っております。
内容についてのお尋ねでございますけれども、これは、今、それぞれの地方入管においてこの内容を分析している段階でございますので、まだ具体的にここでお答えできる段階にはございません。
[096]千葉景子
○千葉景子君
かなりの数が寄せられているんですけれども、ただ、この情報のホームページ、メールでの情報なんですが、大変やりやすいというか、先ほど言ったように匿名でもできるということでもございます。
それから、情報画面を見ますと、外国人の名前、国籍、見掛けた場所などを記入できるようになっているんですけれども、ただ、問題はその通報の動機ですね。本来、通報というのは、不法滞在であるということが推測される理由をやっぱり記載をするとか、あるいはそういうことを挙げて通報するということが本来通報ということの趣旨だろうというふうに思うんですが、このホームページでは、こういうときも通報して結構ですよ、どんどんやりなさいとなっているんですが、その動機を選択する項目としては、不安とか近所迷惑とか、違反者のために解雇されたとか、違反者のために求職ができないとか、こういう項目が挙げられているんです。
これは、考えてみますと、こういうことで通報を認める、あるいは寄せてもらうということになると、何でもいいんだと。ちょっと何となく気味が悪いなといっても通報する、あるいはいろんな、外国の方ですと、地域の中でも、やっぱりそれぞれの文化の違いとかそういうことなどもあって多少摩擦が起こることもある、そういうことになると、近所迷惑、これで通報すると。こういうようなことが言わば助長されるというんでしょうか、そういうことにつながるのではないかというふうに思います。
しかも、匿名性という、これまでのやっぱり手紙とか電話とかいうことになりますと、それなりに意を決して、やっぱりこれは問題がありそうだから通報しようということになるわけですけれども、匿名で、しかも、今、若い皆さんなんかでもどんどんやりますけれども、メールでぷっとクリックすれば通報できるということになるわけで、非常に私は、何か安易にこの外国人に対するというか、いろんな不安を助長するむしろ契機になってしまうのではないかというふうに思っております。
これにはいろんな問題点の指摘がありまして、先ほど申し上げましたように、これが本当に通報ということに適切に対応するような措置なのだろうかということもありますし、それから、日本もこれから国際的な社会の中で共生の社会、外国人の皆さんも今たくさん日本に居住をし、そしていろいろな活動を展開をし、そしてともに社会の支え役となっているというような時代でもございます。
そういう中で、日本も国際条約をきちっと遵守をしながら、多文化共生の社会を目指そうと、こういう時代でございまして、むしろそういうために法務省は人権を、外国人の皆さんの人権もきちっと保障し、そしてともに支え合っていくことのできるような、そういうむしろ積極的な対応を取っていかなければいけないと、こういうことではないかというふうに思います。
ところが、こういう、何か外国人の方を見たら通報していいんですよ、不安とか近所迷惑と。こんなことは別にちょっとしたことでも感じたりすることがあるわけでして、いずれにしても、こういうことをこのホームページで挙げるということは、誤ったやはり外国の人に対する偏見を助長したり、それから外国人の皆さんに対する排外的な意識をむしろ強化をしていくということにつながっていくのではないかというふうに思いますが、こういう点について、大臣、こういうホームページを開設をし、通報を受けるというようなことに当たって大臣は何かお考えになりませんでしたでしょうか。
[097]実川幸夫
○副大臣(実川幸夫君)
今先生御指摘がありましたけれども、我が国に入国し、また在留しておられる外国人のほとんどの方がルールを守っておることは言うまでもございません。また一方、残念ながら、我が国には約二十五万人にも及ぶ不法滞在の外国人が存在していると思われます。
社会の安全と秩序を維持するために、不法滞在者に対して厳格に対応することもまた法務省に対する国民、社会の要請であると考えております。そのためには積極的な摘発活動を行う必要がありますし、これまでも電話、またお手紙で国民の方々からお寄せいただく様々な情報は摘発の貴重な端緒となっております。そのような情報をお寄せくださる方から電子メールで情報を提供していただきたいという声があり、情報提供を受け付ける手段を新たに加えたのが今回の取組でございます。
法務省といたしましても、今回のメールによります不法滞在者等の情報提供等が人権条約違反などの問題を生じさせないように十分配慮した、徹底した上で活用をしていくこととしております。
[098]千葉景子
○千葉景子君
今、人権条約等に違反しないように活用していくというお話でしたけれども、どうでしょうか、逆に言えば、人権条約、人種差別撤廃条約にむしろ既に抵触をすることになるのではないかというふうに思います。
人種差別撤廃条約の例えば第二条第一項というところには、細かくは読み上げませんけれども、締約国が人種間の分断を強化するようなことをしてはならないと、それからいかなる人種差別につながるようなことをしてはならないということが明確にされているわけでもございますし、今回のこのような、ただ不安だとかあるいは近所迷惑だとか、そういうようなことを理由にして外国人に対する不当な通報行為を助長するというようなことは、私はやはりこの人種差別撤廃条約などにも抵触するし、冒頭申し上げましたけれども、いわゆる通報という問題にもやっぱりある意味では逸脱をしているのではないかと、こういう気がいたします。
いかがですか、やっぱりこれは法的にも、それから条約上でも非常に問題が多いというふうに思いますが、その点についてどうお考えでしょうか。
[099]増田暢也
○政府参考人(増田暢也君)
まず、人種差別撤廃条約を取り上げられましたけれども、この条約の第一条第二項で、この締約国は市民と市民でない者との間に設ける区別あるいは優先については適用しないとなっておりますので、直接にはこの条約に抵触することはないと考えております。
よしんば、今回の通報メールが外国人に限って情報提供を求めていることが問題だといたしましても、元々退去強制というのは外国人が対象となっているものでありますから、私どもは、その退去強制の職務を遂行する上で外国人に限って情報提供を求めるというのは、これは合理的な取扱いであると考えておりますので、その点においても条約に抵触する問題はないと考えております。
それから、委員の御質問は、特に強く御指摘になられる点は、匿名の通報を許していること、それから通報動機の中に近所迷惑とか不安などということでの通報を許していること、これが問題ではないかという御指摘をいただいているのですが、もちろん、すべて実名の通報で真実の情報提供がいつも必ず行われるならいいのですが、中には、やはり自分の名前は明かしたくないと、だけどこういうことでここに退去強制の外国人がいると思うから入管の方で調べてもらいたいと、ということをお考えの国民もおられるわけで、それは従来からも、匿名での電話、匿名での手紙などの情報提供はあるわけですから、そういったことから、私どもとしては、真実の情報をいただく上で、その提供をなさる方が、自分の身元を明かしたくないという方について、そういう方のためにやはり情報提供の道は残した方がいいだろうという考え方であります。 それから、通報動機にいたしましても、何も通報動機だけではありませんが、その方が自分の身元を明かしているとか、あるいは通報内容が具体的であるとか、そういったことなどと相まって、その通報内容が速やかに摘発の端緒として着手を検討すべき案件なのかどうか、そういう優先度を判断する上でもやはり通報動機は必要であろうと考えたわけです。
ちなみに、委員は、安易な通報動機で通報を求めると、いい加減な情報、あるいは外国人を軽視するような雰囲気を助長するのではないかという御懸念をおっしゃっているわけですけれども、この入力画面というのは、まず通報者、通報しようという通報者がこの画面を開いて自分の氏名を入力する、あるいは氏名を入力しないなら匿名ということで次の、つまり、もう情報提供を決めた後に次の画面をクリックし、そこで初めて通報がどんな内容であるのかが出てくるものですから、その通報動機を見ていい加減な通報をしようと思うようなシステムにはなっていないと考えております。
[100]千葉景子
○千葉景子君
いや、今そういう御説明ですけれども、今、逆に言えば、このホームページあるいはそれに伴うメールでのいろいろな交流手段あるいは、何というんでしょうね、情報発信、それから情報の取得、これは非常に当たり前に、そしてまた容易な手段としてむしろこの社会の中に今定着をし始めているというわけですから、そういう非常に手軽、それから割と気軽にというやっぱりページとして活用されるんだろうというふうに思うんです。
そういう中で、やはり単に、理由としても、やっぱりその動機付けとして不安とかそういうのが載っていれば、不安ということを理由にして、やっぱり何らかの情報をそこから発信をしていくということにも私はつながっていくだろうというふうに思います。
本来、本当に通報なりあるいは情報をきちっと伝達をしようということであれば、それなりの理由を付して、あるいは匿名というのは確かにあろうかというふうに思いますけれども、やっぱりそういうことを通じて、やっぱりお互いに慎重な対応を取っていくということが必要なんだろうというふうに思います。
むしろ、冒頭申し上げましたように、法務省はむしろそういう安易な、そして外国人に対する差別的なやっぱり社会のありよう、こういうものをむしろ是正をし、そしてまたそれを正していく、そういうためにこそ率先をして取り組んでいかなければいけないという立場にあるにもかかわらず、それを本当に無にするようなこういうホームページの作り方、私はやっぱりこれをこのまま放置をしておくと、何かお互いに監視をし合い、そして何かあれば匿名でちょっと通報をするという密告制みたいなそういう社会を作り上げていく、特に外国人の皆さんに対してそういう対応を取っていく社会、こういうことに法務省がむしろ加担をするということになるのではないかというふうに思います。
私は、こういう今ホームページのやり方であれば、即刻一回これを閉じて、そして改めてどういう形で本当に適正な管理をしていくかということを検討すべきであるというふうに思いますが、法務大臣、どうでしょう、一回このホームページ考え直す、まずは、こういうのではちょっと問題がある、一回閉じて、そして改めて何か検討していくということにすべきではないかと思いますが、その点、大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
[101]野沢太三
○国務大臣(野沢太三君)
委員も御承知のとおり、日本では今、外国からのお客様を倍増させようというような、いわゆるビジット・ジャパン、ウエルカム・ジャパンということでの施策を進めているところでございます。
委員御指摘のとおり、このインターネットの活用による情報提供ということが仮に人権を侵したり、あるいはその今言った外国からの立派なお客様の来日にブレーキになるということでは困るわけでございまして、あくまでこれはルールを守って日本に滞在をしていただくための一つの手段、手法でありますので、今のような御指摘がございましたら、そういった点も十分加味しながら、運用の面その他で更なるまた工夫を凝らしてまいりたいと思っております。
どうぞひとつ、忌憚ない御意見を委員からもひとつお寄せいただければ幸いでありますが、どうぞよろしく。
[102]千葉景子
○千葉景子君
今、忌憚のない意見を申し上げました。一回何しろ閉じなさい。そして、本当に必要な手だてを講ずるのであれば、本当に慎重に、そしてやっぱりむしろ外国の皆さんとともにこうやって一緒に生きていこうよ、そして多くの皆さんが日本の社会にも来ていただきたいと、こういう発信とつながるような、そういう情報提供をやっぱりむしろしていただきたい。
是非、私は、率直な意見として、一回このホームページはやっぱり閉じる、そして改めていろんな情報提供をしていくということを強く求めておきますので、是非、その結果がどうなるかまた拝見をして、必要であればまた意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
大臣、どうぞ一度自らホームページ見ていただきまして、そして大臣としての、大変、良識を是非発揮いただきたいと思いますが、よろしいですか。
[103]野沢太三
○国務大臣(野沢太三君)
逐次、今情報をいただいておりますので、それらの実績を見ながら、より良い姿にはこれは工夫していかなきゃいかぬかと思っております。